「飢えている人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という格言があります。この格言は自立を促す重要性を説いていますが、営業の現場においては、この二者択一では対応しきれない複雑さがあります。すなわち「中間」が存在するのです。魚釣りの例を営業のシチュエーションに置き換えて整理してみましょう。

(1)どこでどう釣るか任せる(難易度:高)

 ターゲット選定からアプローチ手法まで、すべてをメンバーの裁量に委ねる状態です。

 この段階では、メンバーが自ら市場を分析し、お客様を選定し、アプローチ方法を設計する必要があります。自律的な判断力と実行力が同時に求められるため、最も高い難易度となります。

(2)釣れるポイントを教える(難易度:中高)

「あのお客様は今、こういう課題を抱えているのでは」と魅力度やターゲットは示唆するが、実際のアプローチは任せる状態です。

 お客様選定という戦略的判断についてはマネジャーが支援し、戦術的な実行はメンバーに委ねることで、判断の負荷を一部軽減します。

(3)上手な釣り方を教える(難易度:中)

 具体的なトークスクリプトや提案の骨子をアドバイスするが、商談への同行はしない状態です。「何を話すべきか」という内容面での支援を提供する一方、「どう話すか」という実行面はメンバー自身が経験を通じて学ぶ形になります。

(4)セッティングまでやってあげる(難易度:低中)

 マネジャーが商談に同行し、話しやすい空気を作ったり、話の腰を折らない程度に軌道修正をしたりと、御膳立てをする。

 ただし、メインの提案はメンバーに任せる状態です。実践の場にマネジャーが立ち会うことで、メンバーは安心感を持ちながらチャレンジできます。また、商談後すぐにフィードバックを得られるという学習上の利点もあります。

(5)代わりに釣る(難易度:低)

 マネジャーが同行し、自らプレゼンからクロージングまで完結させてしまう。「自分がやった方が早い」という判断に基づく対応ですが、メンバーの学習機会は最も限定的になります。このレベルの支援は、案件の重要性が極めて高く、失敗のリスクを取れない場合の最終手段と位置づけるべきでしょう。

難易度や支援レベルの
調整はこと細やかに行う

 大切なのは、すべての案件を一律のレベルで扱うのではなく、案件ごとに、あるいは商談のフェーズごとに、レベル感を調整することです。同じメンバーであっても、扱う案件の性質や、商談の進行段階によって最適な支援レベルは変化します。

 難易度をチューニングする際、「難しすぎるから易しくする」なら、支援レベルを「(2)釣れるポイントを教える」→「(3)上手な釣り方を教える」のようにしていきます。マネジャーからの支援を増やしていくわけです。

 逆に、「易しすぎるから難しくする」なら「(3)上手な釣り方を教える」だった支援を「(2)釣れるポイントを教える」でとどめておくようにし、実質的に支援を減らすことになります。

 このあたりはマネジャーとメンバーの両者で相談しながら「途中で軌道修正するのもあり」という前提で柔軟に調整していくのが、現実に即したやり方と言えるでしょう。