有形固定資産の取得による支出を26年3月期と16年3月期とで比較したときの増加分は約2570億円で、26年3月期には金銭の信託の設定による支出が約4200億円あった。これら2つを合計すると、約6770億円となる。

 大まかにではあるが、7000億円近い資金がリニア建設、あるいは将来のリニア建設のために充てられたのではないかと推測することができる。

 25年3月期から26年3月期にかけてのB/Sにおける建設仮勘定と金銭の信託の増加額の合計が約7530億円であることも踏まえると、7000億円を超える金額がリニア関連の投資に充てられたといえそうだ。

 鉄道事業における大きな利益から生み出された潤沢な営業CFがあるからこそ、これだけの金額をリニア関連に投資できている。東京・大阪・名古屋という三大都市圏を結ぶ東海道新幹線を有し、圧倒的な利益を計上できているJR東海ならではの「凄み」だ。

リニアへの投資から見えてくる
将来業績に潜むリスクとは?

 一方で、リニア建設はJR東海の将来の業績に対する重石でもある。費用面から見た主な要因は2つある。

 1つは、減価償却費の発生だ。先に述べたように、26年3月期のB/Sには建設仮勘定が約2兆4410億円計上されているが、今後工事が進展するに伴ってこの金額は増加することとなる。総工事費を勘案すれば、最終的には11兆円程度の金額になる見込みだ。

 この建設仮勘定に対しては、減価償却の手続きは行われず、減価償却費は発生しない。しかしながら、リニアが開業すれば建設仮勘定に計上されていた金額は有形固定資産の他の項目へと振り分けられ、減価償却の対象となる(厳密には用地費を除く必要があるが、リニア建設工事費に占める割合が小さいことから以下の試算では考慮していない)。

 現時点では、JR東海がどのような方法でリニア資産の減価償却を行うかは公表されていない。

 しかしながら、現在の有価証券報告書において、有形固定資産の減価償却は主として定率法によって行っているとされていることから、ここでは便宜的にリニアについても定率法を適用すると仮定する。加えて、償却期間を平均40年とすれば償却率は0.050(減価償却費は有形固定資産計上額〔純額〕の5%)、平均50年とすれば償却率は0.040(同4%)となる。

 つまり、上記の仮定に従えば、リニア開業初期には4400~5500億円程度の減価償却費が発生し、その分利益が押し下げられることとなる(ただし、上記の試算は開業初期の負担を示すもので、定率法による減価償却費は年々減少していくこととなる)。