もう1つは、借入金や社債による資金調達に伴う金利の発生だ。

 JR東海の営業CFがいかに潤沢であっても、それだけでリニア建設費を賄うことは難しい。25年10月時点でのJR東海による試算によれば、営業CFに加えて社債や借入金による資金調達が約2.4兆円必要になるという。加えて、長期債務金利3%というJR東海の仮定を踏まえると、年間で約720億円の支払利息が発生することとなる。

 以上の結果、合計でJR東海の利益は約5120~6220億円押し下げられる計算となる。JR東海もこの点を見込んでおり、25年10月時点での試算として、長期債務がさらに増加する前の段階である30年3月期には6000億円を超える水準だった経常利益が、品川・名古屋開業翌年度には650億円にまで低下すると公表している。

 しかし、上記の試算はあくまで長期債務金利3%という仮定に基づいたものだ。仮にJR東海の想定よりも金利が上昇すれば、支払利息がさらに大きくなる可能性もある。

 また、当然のことながらリニア品川・名古屋間の開業翌年度に約1兆6400億円と見込んでいる営業収益が変動すれば、それも利益を左右することとなる。

 今回は、JR東海のB/S、P/L、CF計算書から、リニア建設が決算書に及ぼした影響、そしてJR東海が大きな利益を叩き出している儲けの仕組み、そして多額のキャッシュをリニア建設に注ぎ込める凄みについて解説してきた。

 現在は業績好調のJR東海だが、リニア開業による収益拡大への期待がある一方で、巨額投資に伴う減価償却費と支払利息という利益を押し下げる要因が潜んでいる点には注意が必要だ。

矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授。ローランド・ベルガー勤務などを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。X(@ybknsk)にて、決算書が読めるようになる参加型コンテンツ「会計思考力入門ゼミ」を配信中。著書に『決算書の比較図鑑『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)『決算書×ビジネスモデル大全』(東洋経済新報社)など。
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