フライ家は世界で初めて固形チョコレートを作り出し、ロウントリー家は誰もが知るお菓子「キットカット」の元祖です。
彼らは家内工業から本格的な工場生産へと進み、近代チョコレート産業を形づくっていきます。チョコレートやココアは労働者のカロリー源となり、紅茶とチョコレートで「ブレイク」をとるのが労働者の習慣になっていきました。
時代背景とともに変わる
チョコレートのブランディング
1930年代には、ロウントリー社がイギリス各地で大規模な消費者調査を行い、「箱入りチョコは男性が買って女性に贈る」という傾向に着目し、広告デザインや箱のデザインもモダンでシンプルなものにシフトしていきます。
広告にはドレスアップした男女を登場させ、ちょっと大人な雰囲気でプレゼントされるものとしてチョコレートを表現しました。いわば「誇示的消費」、つまり「贈ること自体に意味がある」というスタイルが広まっていったのです。
第2次大戦後のイギリスではその傾向は一転し、まずは「食べてお腹を満たすこと」が最優先になりました。
『贅沢と欲望の経営史 あなたはなぜ今日もスタバに行ってしまうのか』(坂出 健、光文社)
そんな中で「キットカット」は「食事の合間の食事」として人気になりました。お茶と一緒にちょっとお腹に入れる軽食としてちょうどよかったのです。
その後、生活が豊かになると、「Have a break(ひと休みしよう)」という路線にシフト。これは、午後の休憩時間=労働者の権利という背景にも重なっており、労働と栄養の歴史にもつながっています。
時代が進むとともに、チョコレート業界にも大きな変化が起こります。たとえば、ゴディバ(ベルギー)はアメリカのキャンベル・スープ社に、キャドバリー(イギリス)はアメリカのクラフト・フーズに買収されました。
ロウントリー社も、最終的にはネスレ社の傘下に入っていますが、ブランド名はそのまま残されているので、消費者の多くは買収の事実を知りません。
このように、合併・買収してもブランド名を残し、消費者に気づかせないという仕組みがあり、チョコレートという甘い商品の陰に国境を越えた資本の流れがあるのです。







