新型コロナウイルスの影響で、人々の生活は大きく変わった。ニューノーマルで顧客の支持を集め、勝ち残っていくためにはどんな視点が必要なのか。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#40では、マーケティング経営を提唱し、「ネスカフェアンバサダー」など画期的なビジネスモデルを成功させた、前ネスレ日本代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
コロナで「顧客の現実」が変わった
新しい現実に企業はどう対応するか
――新型コロナウイルス感染拡大の影響で、消費者の価値観や行動は大きく変容したと思います。こうした変化をどう見ていますか。
消費者が変わったというよりは、「現実が変わった」ということだと思います。私はかねがね、「マーケティングは顧客の問題解決である」と言っていますが、実は顧客が変わるわけではなくて、「顧客が抱える問題」が変わるのだろうと考えます。自分が生活している周囲の現実が変わってくるから、問題も変わってくる。それが、顧客が変わるということだと思うんです。
コロナが起こったことで、外出自粛を余儀なくされ、リモートワークをしなければならなくなりましたが、これはコロナが起こる前からやろうと思えばできたわけです。その必要性に気付かなかったということだと思います。
すでにリモートワークが可能なデジタル技術はあったのに、満員電車で通うことが当たり前だと思い込んでいたわけです。
イノベーションがなかなか起こらない原因は、新しい技術が出てきているのに、それを使って「この問題を解決していこう」ということが考えられないからです。
そういう意味で、日本企業は、特に米国や中国と比べるとデジタル化の対応に出遅れてしまった。そして今回、コロナによってそのことに気付かされた。(デジタル化の)アクセルを踏むきっかけになったんじゃないかなと思います。
――技術はすでに存在しているのだから、「顧客の気付いていない問題」を発見するのが重要だということですね。そうした問題を発見するために、企業はどういう取り組みをしていけばいいのでしょうか。