レンタル経済は、不動産という長年の成長エンジンを失いつつある中国経済において、習近平政権が模索する新たな消費の受け皿の一つなのかもしれない。所有を通じて豊かになるのではなく、利用を通じて生活の満足度を維持する。

 この変化は、中国が不動産主導の成長モデルから移行しようとする過程の一側面として捉えることもできる。

「買わせる」ことが難しい時代に
「使用料を払い続けさせる」政策へ

 中国政府はここ数年、消費刺激策として「以旧換新」、つまり買い替え促進策を強化してきた。古い家電や自動車などを買い替えさせることで、消費を下支えしようとしたのである。しかし、この政策は未来の消費を現在に前倒しする性格を持つ。補助金で一時的に需要を作れても、所得見通しや雇用環境が改善しなければ、持続力には限界がある。

 中国国家統計局のデータによれば、2026年1~4月の社会消費品小売総額は前年同期比1.9%増にとどまり、4月単月ではわずか0.2%増だった。買い替え促進策による消費刺激の効果が徐々に弱まりつつある可能性もある。

 その中で、レンタル経済は別の発想を提示する。買い替えを促すのではなく、既存の商品をより長く、より多くの人に使わせる。消費者に所有させるのではなく、使用料を払い続けさせる。販売数を増やすのではなく、利用回数を増やす。これは「買わせる」ことが難しい時代に、「使わせる」ための政策ツールになり得る。

日本企業が
見誤るかもしれないこと

 日本企業にとって重要なのはここである。

 中国の高度成長期、日本企業は中国市場に対して、中国はこれからも豊かになり、より多くの購買力を持つ消費者が生まれ、より多くの商品を買うようになる、という前提を持っていた。しかし、いまこの前提は静かに変わり始めている。

 中国市場が消えるわけではない。高品質な日本製品への需要も残るだろう。だが、中国市場を「より多くの商品を売る場所」とだけ見る時代は、徐々に終わりに近づいている可能性がある。

 もし中国政府がレンタル経済を政策として本格的に育成していくなら、日本企業にとっての問いは、「どうすれば、より多くの商品を中国の消費者に売れるのか」から、「どうすれば、商品の使用権を継続的に提供できるのか」へと変わる。