習近平政権を悩ませた
「不動産不況」と「人口減少」
中国政府がレンタル経済を推進する意味は、単に新しい産業を育てることだけではない。より大きく言えば、過去20年以上にわたって中国経済を支えてきた不動産主導の消費循環が、もはや以前のようには機能しなくなっているという現実を示しているのかもしれない。
中国の高度成長期の消費構造は分かりやすかった。不動産価格の上昇が家計の資産効果を生み、住宅購入が家電、家具、自動車、結婚、育児といった関連消費を生み出す。住宅を買うことは、単に住む場所を得ることではなく、人生設計そのものの中心であった。
しかし、この公式は限界に近づいている。
2016年末の中央経済工作会議で、中国共産党は「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という方針を打ち出した。それから約10年が経過し、中国の不動産市場は高速上昇の時代から長期調整の時代へと移行した。多くの都市で住宅価格はピークから大きく下落し、一部地域では40%を超える下落も見られる。
習近平政権を悩ませたのは不動産不況だけではない。人口動態も追い打ちをかけている。中国の2025年の出生数は792万人にとどまり、人口は4年連続で減少した。婚姻届け出件数も減少傾向が続いている。結婚しない、子どもを持たない、住宅を買わない、車を買わない。こうした変化は、従来型の消費連鎖が弱まっていることを意味する。
不動産という成長エンジンを
失いつつある中国経済
この文脈で見ると、中国政府がレンタル経済を消費政策に組み込み始めたことの意味は大きい。本当の変化は、レンタルという業態そのものではない。重要なのは、北京が「シェアリング」「レンタル」「使用権」を、国家レベルの消費政策の言葉として使い始めたことである。
過去の中国経済における消費の基本公式は、「消費とは商品を購入すること」であった。しかし、いま中国政府が模索している新しい公式は、「消費とは使用権に対価を支払うこと」かもしれない。
不動産時代の消費は、資産価格の上昇期待に支えられていた。これに対して、レンタル経済は使用需要に支えられている。資産を持たなくても使うことはでき、買わなくても一定期間だけ利用できる。所有を通じて豊かになるのではなく、利用を通じて生活の満足度を維持する。







