日本企業の「高品質なモノづくり」が
再評価される契機に
これは、ビジネスモデルの根本的な違いである。商品を一度売って終わるモデルではなく、利用、保守、データ、決済、信用評価、物流、回収、再整備まで含めた仕組みが重要になる。競争相手も、他の製造業者だけではない。レンタルプラットフォーム、決済サービス、ユーザーデータを持つ企業が、消費の入り口を支配する可能性がある。
一つの可能性として、日本企業は自らレンタルプラットフォーム事業に参入するよりも、高品質な機器・部品の供給や、保守・メンテナンス、リファビッシュといった分野で強みを発揮できるかもしれない。モノが繰り返し利用される社会では、品質管理や長寿命化の価値が従来以上に高まる可能性があるからだ。
その意味で、レンタル経済の拡大は、日本企業が得意としてきた「高品質なモノづくり」の価値を、別の形で再評価する契機になる可能性もある。
中国のレンタル経済は
単なる若者文化の話ではない
中国のレンタル経済は、若者文化の話ではない。もちろん、「所有より体験」を重視する若者の価値観は存在する。だが同時に、それは「買えない若者」「将来不安を抱える家計」「大型消費を避ける社会」の姿も映している。
だからこそ、中国政府がこのタイミングでレンタル経済を政策化したことは重要である。レンタル経済の本質は、「若者がモノを借りるようになった」という消費トレンドではない。中国政府が、使用権消費をポスト不動産時代の新しい消費公式に組み込もうとしている点にこそ、注目すべきである。
過去の中国市場の中心的な問いは、「いかに多くの商品を中国の消費者に売るか」だった。これからの問いは、「いかにして、中国の消費者に商品の使用権へ継続的に対価を支払ってもらうか」に変わっていくかもしれない。
この変化を見落とせば、日本企業は中国市場の本当の変化を読み誤ることになる。中国のレンタル経済とは、「若者がモノを借りる現象」ではない。
それは北京が、「消費=モノを買う」から「消費=使用権を買う」へと、ポスト不動産時代の新しい消費公式を模索する試みなのである。







