もちろん、両者は完全に切り離せない。体験を重視し、所有にこだわらない若者は実際に増えている。しかし、中国政府がこのタイミングでレンタル経済を政策的に後押ししている背景には、単なる価値観の変化以上のものがある。

 中国経済はいま、「人々にもっと買わせる」ことが以前より難しくなっている。この4.2兆人民元という市場は、必ずしも若者の生活が豊かになったことだけを意味しない。むしろ、不動産市場の低迷や将来不安の拡大によって、高額商品を所有する代わりに利用するという選択が広がった可能性もある。

ただの環境政策ではない…
政策文書を注意深く読むとわかること

 中国政府の公式説明では、レンタル経済は「グリーン消費」の一部である。文書では、グリーンレンタル、シェアリングエコノミー、資源循環、中古商品の流通が強調されている。政府のナラティブに従えば、目的は資源の利用効率を高め、浪費を減らし、循環経済を構築することにある。

 だが、文書をもう少し注意深く読むと、別の側面が見えてくる。この通知は「グリーン消費」を掲げているが、冒頭では「消費振興特別行動計画」も明確に引用している。主導部門も環境保護部門ではなく商務部である。

 つまり、この政策は環境政策であると同時に、消費政策でもある。中国政府はレンタル経済を単なる環境対策としてではなく、内需を支える手段としても見ている可能性が高い。

 実際、政策文書全体の中で、レンタル経済に割かれた分量は決して大きくない。それでも、中国メディアは、4.2兆人民元という市場規模、延べ7.5億人という利用者数、若者の注文急増を大きく報じている。ここから見えるのは、中国政府が注目しているのは環境効果だけではないということである。

 より重要なのは、消費が発生し続けているかどうかである。モノが売れなくても、利用料が支払われる。新品が買われなくても、サービス取引は発生する。所有に至らなくても、消費統計に反映される経済活動は作り出せる。この意味で、レンタル経済はすでに環境政策の枠を超え、中国の成長戦略と消費政策の一部になり始めている。