ECBなど利上げへの転換がうねりに
景気悪化よりインフレ加速のリスク重視

 アメリカでは、FRB(連邦準備制度理事会)のウォーシュ新議長の下での最初のFOMC(連邦公開市場委員会)が近く開かれるが、欧州やオーストラリア、南アフリカの中央銀行は、インフレ防止のために利上げに踏み切っている。

 欧州中央銀行(ECB)は、6月11日の理事会で政策金利の引き上げを決め、主要政策金利の中銀預金金利を2.00%から2.25%と、0.25%幅引き上げた。

 利上げは2023年9月以来、約3年ぶりのことだ。このとき、ECBはロシアによるウクライナ侵略後のインフレに急ピッチな利上げで対応した。しかし、その後、物価上昇率が2%前後で安定したため、24年6月に利下げに転じた。そして、前回まで7会合連続で金利を据え置いてきた。

 ECBは11日、26年のユーロ圏の物価上昇率見通しを、3.0%と3月時点(2.6%)から上方修正した。ラガルド総裁は、「中東の紛争がインフレ圧力を生んでおり、影響について複数の中期的なシナリオを検討した上でも利上げの判断は妥当」との認識を示した。

 世界88の中銀のうち、4月に利上げした中銀の数は利下げした数を上回ったという報道(注1)もあり、中東情勢の混乱を受けた資源高を背景に、景気悪化よりインフレ加速のリスクが大きいとの認識が定着しつつある。

 そして利上げへの転換が大きなうねりになり始めている。

ウクライナ侵攻の2022年は出遅れ
円安導き輸入物価の上昇を招く

 各国の中央銀行が警戒するのは、引き締めの遅れが批判された21〜22年の再来だ。このとき、新型コロナウイルス禍後の供給網混乱と、ロシアのウクライナ侵攻やロシアへの制裁によって、歴史的な物価高が始まっていた。

 しかし、FRBは物価高を「一時的」と主張し続け、利上げが遅れた。21年11月末にはパウエル議長(当時)がこの表現をやめる考えを示し、その後、22年3月から急ピッチの利上げを迫られた。22年には3月、5月、6月、7月、9月、11月、12月と連続的に利上げし、特に6月以降は0.75%幅の大幅な利上げを続けた。

 これに対し、日銀は当時、短期政策金利をマイナス0.1%、10年国債利回りをゼロ%程度に抑えるイールドカーブ・コントロールを続けていた。22年12月に長期金利の変動幅を広げたが、短期金利はなおマイナス0.1%であり、米国の急速な利上げとは対照的だった。

 これが為替レートを円安に導き、輸入物価を通じて日本の物価上昇を強めた重要な要因の一つになった。今回、利上げに遅れれば、それと同じ状況が生じる危険がある。