ここで「はい、いいですよね」と言って終わってしまってはもったいない。

 ここは質問返しで会話を盛り上げます。

「RIMOWAをお持ちなんですか?」

 と聞いてみると、

「父が2~3個持っているんです」

 とのこと。

 さらに話していくうちに、

「実家は福島のお寺なんです」

「経験を積むために京都へ来ています」

 と、会話は自然に広がっていきました。

 ほんの5分ほどのやりとりでしたが、そのお坊さんのことをとても身近に感じたのを覚えています。

 何気ないひと言が、人との距離を縮める。そんなことは本当にあるのです。

「暑いですね」が
最強の雑談フレーズといえるワケ

 では、なぜあのお坊さんの雑談はあれほど自然だったのでしょうか。

 理由はシンプルです。

「いまここ」にあるものを、そのまま言葉にしていたからです。

 目の前にあったのは、私のスーツケース。それを見て感じたことを、素直に口にした。

 ただ、それだけです。

 私はこれを、「いまここトーク」と呼んでいます。

 お互いが同じ場所にいて、同じものを見て、同じ空気を感じている。

 その共通の現実を言葉にする。それが、雑談のいちばん自然な形です。

 例えば、「暑いですね」と言われて、「いや、全然暑くないです」と返す人はほとんどいません。

 だからこそ、「暑いですね」は最強の雑談フレーズなのです。

・相手の持ち物

・オフィスの雰囲気

・名刺に書かれた部署名

・受付に飾られているもの

・訪問先までの道で気づいたこと

 そうした「いまここ」にある小さな情報は、全て会話の入口になります。

 例えば、こんなふうに。

「このあたり、最近工事が増えましたよね。いつもこの道を通って来られるんですか?」

「こちらのオフィス、とても開放的ですね。引っ越しされたのは最近ですか?」

「名刺の部署名が気になったのですが、どんなお仕事をされているんですか?」

 難しいことは何もありません。

 見えているものを、素直に言葉にするだけでいいのです。

 大切なのは、褒めることでも、気に入られようとすることでもありません。

「あなたに関心を持っています」というサインを、さりげなく届けること。それだけで、相手の心は少しずつ開いていきます。