ITベンダー、コンサル、企業、政府…勝ち残るのは誰か AIバトルロイヤルPhoto:Anna Moneymaker, Jose A. Bernat Bacete, NurPhoto/gettyimages

国と企業の在り方まで変える可能性を秘めているといわれたフロンティア(先端)AI、Mythos。それが米政権により一夜にして止められるという事態が発生した。AIが政権の一存で簡単に供給遮断されるという事態は、今後日本や企業がAIとどう付き合うかの戦略にも重大な影響を及ぼす。AIを業務の中核に取り入れようとしていた日本企業はどう対応すべきなのか。連載『AIバトルロイヤル』の本稿では、もはや安全保障や国家間競争にまで発展しつつある、先端AIを巡る混乱について考える。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

政権の一存で容易に止まる先端AIに
われわれはどう対応すべきなのか

 世界を変えるかと思われ、喧伝され、警戒された魔法のつえが、一夜にして米政権に取り上げられた。

 米AI企業Anthropicの最新モデル「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」が一夜で停止に追い込まれた。上位モデルで限定された企業に提供されていたMythosプレビュー(本連載『AnthropicとOpenAIの“AIサイバー防御サービス戦争”が開けたパンドラの箱、システムセキュリティに降って湧いた「4つの大問題」とは?』で詳しく解説)についても影響を受けた可能性が高い。

 Anthropicは「米政府は国家安全保障権限に基づき、Mythos 5とFable 5とについて、米国内外を問わず外国籍者によるアクセスを停止するよう命じた。対象には、Anthropic社内の外国籍社員も含まれる。法令順守のため、結果として全顧客向けに両モデルを停止せざるを得なかった」と発表。

 一方、米商務省産業安全保障局(BIS)は、Mythos 5とFable 5について「世界中の全ての外国籍の人物に対し、輸出、再輸出、国内移転を行う場合にはBISの個別許可が必要」とAnthropicに書簡で通知したという。これらのモデルにサイバーセキュリティーの安全装置を回避できる穴(ジェイルブレーク)があり、中国やロシアなど懸念国の軍・情報機関に利用・流用される恐れがある、という通報が政権に寄せられたことが理由とされている。Anthropicはこれに反論し商務省当局者と協議を続けているが、18日現在、再公開に向けた進展は見られない。

 今回の事件は日本にもインパクトは大きい。AnthropicはNEC、富士通、日立製作所がこぞって提携し、上位モデルへのアクセスを喧伝していた企業だった。メガバンクなどの大手企業がMythosプレビューへのアクセス権を得ていたという観測もあり、影響は必至だ。さらに、今回Mythos 5とFable 5が止められた経緯は、今後AIモデルが「政権の判断次第で突然止まる」リスクを持つ、経済安全保障の対象となる半導体素材などのような輸出管理物資になったことを示している。

 日本はMythosのみならず、他のあらゆる先端AIモデルが抱える「地政学的リスク」にどう対応すべきなのか。今回の事件が、なぜ、日本企業にとって最悪のタイミングだったのか。そして日本企業が今すべきことは何か。「AI版BCP(事業継続計画)」の導入について具体的な方法とともに論じる。さらには、ソブリンAI(自国内で完結するAI)の是非についても次ページで詳しく見ていこう。