「移動の質」を高めたい

F:移動の質、ですか?

樋:はい。運転する人も同乗される人もそうですが、移動の時間は、その人にとって何かしら価値があるべきだと思っています。単にA地点からB地点へ移動するためだけのクルマではなく、移動する時間そのものの質を向上させたい。そのための手段としてクルマを提供したいと考えています。

F:なるほど。単なる移動手段ではなく、移動している時間そのものを良くしたい、と。

樋:そうです。その中で先にお話ししたトータルパッケージ……乗り心地であったり、ハンドリングであったり、EVならではの静粛性であったりと、そうしたものを組み合わせて、移動の質をいかにお客様にとって「良い時間だったね」と思っていただけるものにしていくか。そこが大事だと思っています。

「どこまでも行けるクルマ」ではなく「どこまでも行きたいクルマ」

F:良いですね。EVというと、つい「何キロ走れるか」とか「何分で充電できるか」とか、数字の話になりがちですが、樋渡さんのおっしゃる「移動の質」は、単に何キロ走れるかという単純な話ではない。

樋:もちろん、「何キロ走れるか」「どこまで走れるか」というのはとても大事です。でもそれだけではなく、「どこまでも行きたいクルマ」にしたい。このクルマでどこまでも走っていきたい。そういうふうに造りたいと考えています。

F:「どこまでも行けるクルマ」ではなく、「どこまでも行きたいクルマ」にしたい。これは良いですね。そのままタイトルで使えそう(笑)。

 航続距離はEVにとって極めて重要な要素だ。最重要課題と言ってもいい。電池が切れればEVはただの箱だ。充電場所がなければそこでオシマイだ。だからこそ前回、残量表示の正確さを称賛し、どこで何分充電すればいいかという話に感嘆したのだ。

 だがどれだけ遠くまで走れるとしても、乗り心地が悪く、車内がうるさく、同乗者が疲れてしまうようでは、そのクルマで遠くへ行こうとは思わない。思えない。

「どこまでも行ける」と「どこまでも行きたい」は、似ているようで全然違う。ここは3代目リーフを理解する上で重要なポイントだろう。