日本の株式市場という無防備な池を泳ぐ、動きの鈍いガチョウを捕まえて体にぶら下げた金の卵を刈り取ればそれだけで儲かりますし、仲良く棲み分けている平和な業界に異分子が入り込むのを嫌う業界仲間が助けに入るだろうということは、容易に想定できます。
阪神電鉄グループの株価は
球団の価値が反映されず
関西の阪神電鉄業界のケースは、同業なのだから安定性(r)も成長性(g)も似たようなはずですからPER(編集部注/株価が企業の利益に対して何倍であるかを示す指標)やEBITDA倍率(編集部注/企業の買収価値が本業で稼ぐ利益の何年分に相当するかを示す指標)が同じ水準になるべきところ、阪神電鉄の倍率の低さが際立って見えます。
沿線の特性により利益率に違いが出るのはわかりますが、阪神のROE(編集部注/純資産利益率)の低さからは、財務レバレッジの低さ、つまり借金をあまり使わない悠々自適な経営を見てとれます。
何より驚くのは株価400円のPBR(編集部注/現在の株価が企業の純資産に対して何倍で評価されているかを示す指標)が1.0倍だという点です。
阪神電鉄グループは阪神タイガースという金の卵を産むガチョウがいて、大阪梅田の好立地に保有する不動産は当時260億円の含み益があると言われていました。不動産の含み益とは不動産の簿価(バランスシートに載っている数字)と時価との差額ですから、PBR1.0倍の株価はこの含み益相当の価値すら反映しておらず、阪神タイガースをはじめとする無形営業資産の価値がゼロ以下だと言っていることになります。
これはありえないほど安い、と村上ファンドが目をつけるのは当然です。
阪神のPER26倍は絶対的水準として低くない、EV/EBITDA倍率の7倍も他業界と比べれば適正水準です。しかし村上ファンドが注目したのは、阪神の水準が「同業他社と比べるとかなり低い」という相対評価であり、鉄道業と言いつつ、その価値の中核である保有不動産の時価が株価に反映されているか、でした。







