堀江貴文社長が、「仲良く提携して一緒に企業価値を高める経営をやりましょう、と言っているじゃないですか。争うつもりはないです」と敵対的な買収ではないことを装い、対するフジの日枝会長は、「そういうつもりなら法の穴をすり抜けて株を買い占めるようなマネをするな。そういうことをする会社とはとても信頼関係は築けない」と応酬し、さまざまな防衛策を繰り出しました。

 M&Aの本質は経営者の力量を競い合う市場活動で、その活動が新たな価値を生み、社会を活性化する原動力になるのですが、両者のやりとりは正直なところ企業価値の創造、という観点からはかなりレベルの低い、起業家と大企業経営者の意地とプライドの戦いで、何を基準にどう争っているのかよくわからないものでした。

 案の定、争いの決着は、フジテレビによるニッポン放送の子会社化をライブドアが認めて持ち株をフジテレビに売り渡し、同時にフジテレビは、ライブドアに資本参加し業務提携の可能性を引き続き検討する、という双方メンツの立つよくわからない形のものとなりました。

 その後、証券取引法違反で堀江氏は逮捕されライブドアは破綻、フジテレビは資本参加から多額の損失を出して撤退しました。

「不動産事業は…」
ダルトン社の主張

 ライブドアとの争いから20年後の2024年末、アジアへの長期投資を得意とする米国ファンド、ダルトン・インベストメンツ(ダルトン)が5%超の大量保有株主として登場します。PBR(編集部注/株価が企業の純資産に対して何倍で評価されているかを示す指標)0.5倍に低迷するフジMHDのガバナンス改革と保有不動産(サンケイビル)価値の顕在化を求めました。

 2025年、フジテレビは、大物タレントと女性アナウンサーのトラブル対応の不適切さをきっかけに広告スポンサー離れの経営問題を引き起こし株価が2000円付近まで暴落。ダルトンは株を買い増すとともに要求を強め、2025年6月、定時株主総会での取締役候補者12名の株主提案を行いました。候補者の中には20年前にライブドアからの買収防衛策をアドバイスしたSBIホールディングス北尾吉孝会長が含まれ「あの時フジテレビを助けたのは間違いだった」といわれる始末でした。