フジの不動産やコンテンツ制作の価値が株価に反映していない点に着目して経営陣を揺さぶる、という村上ファンドの手法は、大阪の不動産含み益や阪神タイガースの価値に着目して阪神電鉄の株式を大量取得した20年前から相変わらず、の感を否めません。村上ファンドはこの取引で推定400億~500億円儲けた計算になりますが、奇しくもその金額まで20年前と同じでした。
標的企業の株式を買い集め高値で買い取らせる行為は米国で「グリーンメール」と呼ばれますが、これは1980年代に廃れた手法で、米国なら他の株主が損害賠償請求の株主代表訴訟を起こすことでしょう。
『会社の値段[新版]』(森生 明、筑摩書房)
この一件は、日本では相変わらず、一般投資家の利益保護の視点に欠けた会社対応がまかり通ることを露呈しました。そして同時に、ガバナンス改革の先導者的役割を果たしてきたと自負する村上氏も、実は自分さえ儲かれば他の株主にはお構い無しの「濫用的買収者」「反市場的投資家」の側面を併せ持っていることを露呈したといえます。
公共性を盾に進化・変革を怠ってきたオールドメディア業界には外圧が必要で、業界再編M&Aが起こるべき業界だとファンドの目に映ったのは理解できます。彼らに多額の「手切れ金」を支払ってお引き取りいただくという発想は、昭和の総会屋対応を彷彿させます。
コムキャストの買収提案を退けると同時にアイズナー会長を退任させた後のディズニーが20年間で大きく躍進し、同じ時期にドラマや音楽で韓国勢がグローバル進出しました。
これに比べ、フジMHDが、20年前のライブドア、今回の村上ファンド撃退のために数千億円を費やす保守的・内向き姿勢は際立ってみえます。これが「失われた30年間」を象徴する、日本企業の1つの姿だといえるのかもしれません。







