低下を続けてきた日本の実質賃金
今年は1~4月まで連続プラス
日本の実質賃金(2020年を100とする指数)は、1997年頃に116.4になった。ところが、これがピークであり、それ以降、下落を続けてきた。
アベノミクスの時代にも低下が続き、2012年の105.9から、20年の100.0まで低下した。そして25年には98.0という水準まで下落した。
実質賃金の増加率を考える場合に、次の2点に留意する必要がある。
第一は、ボーナスの影響だ。
企業は業績が好転すれば、ボーナスを増やす。ボーナスは、将来企業の業績が悪くなればまた元の水準に戻すことも容易なので、企業は賃金よりはボーナスを膨らまそうとする傾向があるといわれている。
したがって、ここ数年の傾向としては、6、7月や11、12月で、実質賃金の対前年上昇率が高くなる傾向が見られた。
年間のデータにはこの影響も含まれているので、年間のデータにはある種のバイアスがあると言える。
そこで、実質賃金の伸び率の問題を考えるには、ボーナス月以外の月のデータを見るのがよい。
1、2、3、4月は、ボーナスの影響はないと言ってよい。そして26年はこれらの月も実質賃金が増加しているのだ。
政府の対策で上昇率抑えられている物価
相殺すると4月実質賃金伸びは+0.92%
ただし最近における実質賃金の上昇には、問題がある。政府がガソリン代補助などの物価対策を行っているために、消費者物価が抑えられているからだ。
これについては、本コラム「高市『高圧経済』はインフレ昂進の逆効果、実質賃金が伸びない『潜在成長率低下』を食い止める方法」(2026年6月25日付)でも指摘した。総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国2026年4月分」(5月22日)によれば、政府の物価対策(エネルギー関連)による消費者物価の下落率は、1.08%ポイントだ(うちガソリンは0.87%ポイント)。
政府の物価対策でガソリン価格などが抑えられれば、家計の支払い額は軽減される。だから、一見したところ、それでよいように思われる。
しかしながら、物価対策のためには、それだけの財源が投入されていることを忘れてはならない。そして、これらの費用は何らかの形で家計の負担になっている。
このことを考えれば、政策によって引き下げられた消費者物価を用いて実質賃金を計算するのではなく、それがなかった場合の数字を用いて判断すべきだろう。
そうした計算を行えば、4月の実質賃金の上昇率は、0.92%になってしまう。ただ、上昇率が1%に近いのは事実であり、無視できない伸び率とも言える。なお、4月の数字は、新入社員の初任給の上昇率が高いことの影響を受けているかもしれない。
ここまでの議論をまとめれば、次の通りだ。
まず、ボーナスの影響を含むボーナス月や年間の数字を見るのではなく、ボーナス月でない月の対前年増加率を見るべきだ。それを見れば、実質賃金の伸び率は最近に至るまでマイナスが続いた。
しかし、26年の1、2、 3、4月は、ボーナス月でないにもかかわらず、実質賃金伸び率がプラスになった。だが、これは政府の物価対策のために消費者物価が人為的に抑えられた面が大きい。
それを除外して考えれば、実質賃金が確実に増加したとはまだ言い難い。








