映画製作で多額の借金
紹介された怪しげなバイト
――役者は演技指導にしたがってやっていると思っていたので、それほどまでに努力をされていたとは驚きです。
いや、そこには多様な流儀の方がいて、そういうことをしなくても瞬時に役がつかめる方もいます。
僕がかつて見て衝撃を受けた方は、全く料理ができないのに、本番になると急にそれらしくできてしまう。必要なタイミングで何度でも涙が出せる人とかね。この業界には特殊な才能を持つ方が数多くいます。
そういう方は、事前にあまり予行練習をすると、かえって調子が狂うのかもしれません。
――政伸さんは若い頃から俳優一筋なのかと思っていましたが、最初は映画監督を目指していたと書かれていましたね。
俳優を目指す前は、映画監督になることを目指していました。20歳になるかならないかの頃のことです。
実際に映画を作っていたのですが、2本目に制作した映画で280万円という借金を抱え人生が変わりました。予想以上に編集代がかかり、請求書を見てガビーンと凍りつきました。当時の僕にとって、この額は途方もなくて、今でいえば憶単位ぐらいの重みに感じました。
ジャズクラブのボーイや、カラオケパブの店員など、それまでもアルバイトはしていましたが、とてもそうした仕事ではこの借金は返せそうにない。一気に稼げる実入りのいいバイトはないかと友達に相談したら、いろんな仕事を紹介されました。
たとえば、医療機関の死体洗いのバイトです。薬品の入ったプールに複数の遺体が浸け込まれていて、ときどき水面に浮上してくる。すると、遺体をモップで水中に押し戻すという仕事です。
1晩やって1万5000円だったと思いますが、臭いが取れなくなるそうです。ちょっと無理だなと思い、このお仕事は断念しました。
次に紹介されたのが、医学研究のために自分の骨を折る仕事です。バイトというより献体です。麻酔を打って、あるマシンに腕を入れるとバキバキッっと骨が折れる。その瞬間を連続撮影する。
もちろんその後の処置はしてもらえるので元には戻りますが、腕1本40万円ということで、恐ろしいうえに両腕両足をやってもまだ足りない。こちらも断念しました。
さらに危険な匂いのする仕事の話もありました。あるバッグを横浜埠頭まで運んだら20万円もらえるという仕事です。もちろん中身は分かりません。







