NHKのテレビ番組での共演をきっかけに、親友同士になった渥美清さんと黒柳徹子さん。しかし、ドラマ『お父さんの季節』での最初の出会いは衝撃的なものだったといいます。撮影に入る前の台本の読み合わせで、渥美さんから「なんだこのアマ!」と言われた黒柳さん。黒柳さんがお返しに渡したものとは――。
※本稿は山田洋次・黒柳徹子『渥美清に逢いたい』(マガジンハウス、2024年9月5日発行)の一部を抜粋・編集したものです。
「『このアマ!』なんて言っていないで
たまには本を読みなさい」
山田 渥美さんにしてもね、徹子さんからそれはもう多くの影響を受けていたと思うんですよ。
黒柳 そうですねえ。一度ね、ずっと後になってから「今では僕は読書家なんて言われたりしますが、それはお嬢さんのおかげなんですよ」と言われたことがありますね。
Photo:JIJI
山田 僕らにしてみると、渥美さんは大変な読書家という印象がありますよ。徹子さんが勧められた?
黒柳 そうですね、「本をお読みになったら」と言って、『星の王子さま』をあげたんです。『クマのプーさん』もかな?
出会ってからそれほど経っていない頃で、「そんなにおっかない声で『このアマ!』『テメエこの野郎!』なんて言っていないで、たまには本を読みなさい」と言ってね。
私に対して、「このアマ」とか言うわけですから、はじめは敵意を持っていたというのはわかりますよ。だから本でも読んだらいいと思ってね。
山田 「上等だよ、おまえなんか!」っていう。
黒柳 そうですよ。「何にもわかんねえだろう!」っていう感じだったと思いますよ。だけど、だんだん親しくているうちに、私がユニセフの親善大使になったりとかね、あれこれやっていることを見てて、それですこしわかってくれたのかなとは思いますけどね。
山田 そういう出来事を超えて、やっぱりお互いに人間の魅力ってのはあるんだってことじゃないのかな。
黒柳 そうですよね。
山田 だから、渥美さんが、徹子さんと知り合ったってことは、彼にとって、人生にとても大きな影響を与えたってことじゃないのかな。この人に最初に読書経験を与えるとすれば、ぜひ『星の王子さま』がいいとお思いになったの?







