安倍晋三 レガシーの検証#4Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

安倍晋三氏の功績として、国際社会における日本のプレゼンス向上を挙げる人は多い。だが知日派として知られるオランダ人ジャーナリストのイアン・ブルマ氏は、「安倍氏は最悪の遺産を残した」と厳しく評価している。特集『安倍晋三 レガシーの検証』(全9回)の#4では、アジア研究者として国際的に定評のあるブルマ氏に、海外から見た安倍氏の功罪を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

安倍氏の「最悪の遺産」を
イアン・ブルマ氏が赤裸々指摘

 安倍晋三氏の悲劇的な死を受けて、海外の多数の政府や要人から追悼の意が表された。これをもって、「国際政治の場において高く評価された首相」として、安倍氏の功績をたたえる向きが国内には少なくない。だが実際には、政治家としての安倍氏に辛辣な評価を寄せる海外の識者も散見される。

 イアン・ブルマ氏は日本についての著作が複数あり、アジア研究者として国際的に定評がある。著述活動以外にも2015年には、米ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル名誉教授や米マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー名誉教授など数多くの日本研究者、歴史研究者と連名で、「日本の歴史家を支持する声明」を発表した。

 この声明は戦後70年という節目に合わせて、戦後の日本が守ってきた民主主義的姿勢を高く評価するとともに、現在の日本政府が戦時中の過ちを「清算」するよう求めた内容だ。安倍政権の歴史認識に懸念が高まっていた当時、声明は安倍氏にも送付された。

 安倍氏がこの世を去った今、日本の政治を長く見つめてきたブルマ氏は、安倍氏の功罪をどう考えているのか。書面インタビューで聞いた。

――安倍氏が国際政治に与えた影響をどう評価していますか。