しかし、2015年7月の第三者委員会報告書には、私が覚えている事実とは全く別のことが記載されていた。すぐさま〈DS社〉経理部長に9月28日の資料全てを持って説明に来て欲しいと言ったところ次のことが分かった。

〈DS社〉内のメール及び〈DS社〉経理部長の説明によれば、同日午後3時33分に〈DS社〉からカンパニー社長方針としてTIH(東芝情報機器杭州社)に緊急メールが発信され、TIHへの部品売却が行われたとのことだった。

 当日私が見た資料はすでに破棄していたが、〈DS社〉経理部長が持ってきてくれた資料には、私の記憶と同じ119億円まで35億円不足の84億円の対策が記載されていた。その資料には、TIHへのマスキング価格での部品販売の記載はなかった。何故、第三者委員会報告書の記載と違うのか理由は分からない。さらに〈DS社〉経理部長はTIHへの緊急メールも持参してくれた。

 そのメールには、「9月最終日ですが、DS社内緊急事態が発令され、損益調整をすることになりました」と記載されている。メールの発信時間は午後3時33分である。午後2時過ぎに深串カンパニー社長から佐々木社長への説明のあと、田中副社長たちとの打ち合わせが終わり、私が退席したのが午後2時40分頃だったので、そのしばらく後に発信されたことになる。第三者委員会の弁護士は、〈DS社〉経理部長からもヒアリングしているはずだが、

〈DS社〉深串方彦カンパニー社長らDS社関係者は、(中略)同日午後2時より、これらのコーポレート幹部とともに、佐々木則夫社長に対し、実施する損益対策の検討結果を報告した。ここで説明されたのは、〈DS社〉は、9月末日までに「バイセル」39億円、「C/O(損益繰延べ)」65億円の合計104億円の損益対策を含む合計119億円の損益対策を実施するというものであったが、佐々木則夫社長をはじめとするコーポレート幹部もその実施を認めたものである。
(第三者委員会報告書 228ページ)

 との第三者委員会報告書の記載には大きな疑問を感じる。関係者からのヒアリングや証拠となる書類やメール等をきちんと確認して記載したとは、とても思えない。

 また、同年12月26日にもTIHへの部品売却が行われたようだ。この事実についても、第三者委員会報告書を読むまで、私は知らなかった。第三者委員会報告書には、〈DS社〉経理部長が私にも「『監査リスクがある』ことを説明済みである」と記載しているが、当日、〈DS社〉経理部長から直接報告を受けた記憶は全くない。

 私は、手帳にその日の会議や報告事項をすべてメモしていたが、同日、〈DS社〉経理部長と接点があったのは〈DS社〉のメンバー約10人との30分程度のランチミーティングだけで、そこでは〈DS社〉の業績についての説明が行われたのだった。