加硫機から“ホカホカ”で生まれるタイヤ

 工場は非常に魅力的だった。

 生まれ変わったタイヤが、加硫機からホカホカ湯気を上げて出てくる姿は、孵卵器から生まれたてのヒヨコが出てくるようで、感動する光景だった。また別の会社の台タイヤに、TOYOの文字が新たに刻まれる“ダブルネーム”のリトレッドタイヤも実に興味深かった。

「減らないタイヤ」は危険だった?再生タイヤが寿命を「あえて新品未満」に抑えるワケ使い込まれた中古タイヤを集め、キズや穴などがないものを選んで台タイヤに加工する Photo by A.T.
「減らないタイヤ」は危険だった?再生タイヤが寿命を「あえて新品未満」に抑えるワケ台タイヤの表面を機械で削る(バフィング)。新しいゴムを密着させるために表面はザラザラにする Photo by A.T.
「減らないタイヤ」は危険だった?再生タイヤが寿命を「あえて新品未満」に抑えるワケ工場内にはずらりと加硫機が並んでいる Photo:Diamond
「減らないタイヤ」は危険だった?再生タイヤが寿命を「あえて新品未満」に抑えるワケ加硫機から出てきたばかり、ホカホカ湯気が上がるできたてのリトレッドタイヤ Photo by A.T.

※工場見学の熱気と巨大設備のレポートは、前回記事で詳しく紹介しています。

右後輪ミシュラン、左後輪ダンロップ?

 工場見学を終え、再び会議室に戻った不肖フェル。今度は現場の技術やリアルな市場環境を熟知する、トーヨータイヤの杉本氏と、トーヨーリトレッドの月岡氏に見学後の質問をぶつけてみることにした。

F:いやはや、工場の熱気には圧倒されました。あんなに巨大な設備で緻密な作業が行われているとは。ただ、現場を見て少し気になったことがありまして。よそのメーカーのタイヤもベースとして流れていましたよね?

トーヨーリトレッド 常務執行役員 生産本部長 糸魚川工場長 月岡洋人氏(以下、月):はい。当社の工場ではトーヨータイヤ製だけでなく、他社製のタイヤもベースとして再生しています。これには大きく分けて二つのパターンがありまして。一つは、運送会社などのユーザー様が「自社で使っていた素性のわかるタイヤを再生してほしい」と指定して持ち込まれる更生加工(委託)のパターンです。そしてもう一つは、我々が独自のルートで回収した状態の良い台タイヤを再生し、完成品として販売するパターンですね。

F:なるほど。でも、それらはすべてトーヨータイヤの販売店で売られるわけですよね?お客様から「トーヨーのお店で買ったのに、タイヤの横にミシュランって書いてあるぞ」と言われたりしないんですか?

TOYO TIRE 商品企画本部 生産財商品企画部長 杉本裕昭氏(以下、杉):ないですね。リトレッドタイヤをご購入されるお客様は、ベースのブランドが何であるかよりも、「トーヨーリトレッドが厳しい検査を通して、しっかりと再生したタイヤである」という品質そのものを信頼して買ってくださっています。ですので、トラックの右後輪がミシュランベース、左後輪がダンロップベース、といった使われ方も現場ではごく当たり前に存在しています。