:もう一つ「コスト」です。トラックの新品タイヤは1本数万円、大型になれば十数万円と非常に高価です。だからこそ、台タイヤを回収し、削って、厳密な検査をして、新しいゴムを貼り、加硫機で焼き付ける……というこれだけの手間暇をかけても、新品に対して十分に価格差のメリットが出ます。しかし、乗用車のタイヤは新品でも数千円から、高くても数万円で買えてしまいます。全く同じ工程を踏んで乗用車用のリトレッドを造っても、新品と変わらない価格か、かえって高くついてしまう可能性がある。

F:なるほど。乗用車向けが存在しないのには、物理的にも経済的にも極めて合理的な理由があったのですね。私が買っていたのは、何しろ45年以上も前の話ですから(苦笑)いや、完全に合点がいきました。

 エコで安価で何より徹底した「安全への計算」が張り巡らされたリトレッドタイヤの世界。「エコ」という綺麗事だけでは過酷な物流の現場は回りません。

 そこには100万分の1単位でトラブルを潰しにかかる現場の執念と、ナマモノである“ゴムの特性”を知り尽くした技術者たちのプライドがミッチリ詰まっているのでした。

「減らないタイヤ」は危険だった?再生タイヤが寿命を「あえて新品未満」に抑えるワケリトレッドタイヤと相性が良いのは、ゴミ収集車や路線バス、ダンプなど、街中でストップ&ゴーを繰り返す「働くクルマ」。タイヤが多ければさらにコストダウン効果は高くなる  Photo:PIXTA

 街中でゴミ収集車や路線バスを見かけたら、ぜひその後輪に目を向けてみてください。厳格な検査と過酷な熱処理をくぐり抜け、見事なダブルネームを与えられて生まれ変わった“黒くてタフな再生回帰者”たちが、今日も寡黙に日本のインフラを足元から支えているはずです。

 高瀬社長、杉本さん、月岡さん、そしてトーヨーリトレッド工場の皆様。今回は素晴らしい知見をいただき、ありがとうございました。

(フェルディナント・ヤマグチ)

普通・中型トラックのほうが“土台”に向いている

 こんにちは、AD高橋です。

 国土交通省「トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)」によると、一運行の平均走行距離は以下の通り。

・普通 172km
・中型 227km
・大型 347km
・トレーラー 280km

 ただ、走行距離は運行形態によって大きく変わるもの。たとえばフェルさんの別邸がある宮崎から東京を越えて東北などに荷物を運ぶトラックだと、片道の走行距離が軽く1000kmを超えます。大型トラックは年間走行距離が10万km以上になるのは普通のこと。運転は週末のみで年間走行距離が3000~5000km程度という一般ドライバーからすると、とてつもない走行距離に感じるかもしれません。

 しかも荷物をたくさん積んで走るトラックには、重さを分散させるためにたくさんのタイヤがついています。たくさんの距離を走り、タイヤの数も多い。だからこそタイヤ交換にかかる経費はバカになりませんが、実は短距離走行の機会が多い普通や中型トラックのタイヤのほうがリトレッドタイヤに適しているというのはおもしろいですね。