「老後が不安だから」
「病気になるかもしれないから」
「子どもに迷惑をかけたくないから」

 もちろん備えは大切です。しかし、お金が足りなくて苦しんでいる人は、メディアなどが発信する「老後のお金が足りない」というイメージよりも、実際には少ない印象があります。それどころか、お金をかなり余らせたまま亡くなるケースが珍しくありません。

 経営者でも医師でも弁護士でもない、一般的な会社員だった人でも、2000万円ほどを使い切れずに残している例を、数多く目にしてきました。

 不安ばかりを優先しているうちに、お金を使う体力も気力も失われていきます。

 旅行に行きたいと思っていても足腰が弱くなる。会いたい人がいても遠出が億劫(おっくう)劫になる。

 やりたかったことがあっても健康が追いつかなくなる。

 人生には期限があります。そして、お金にも「使いどき」があるのです。

高齢になってからお金を使うのは意外に難しい

 老後の不安からお金を使わないようにしてきた。しかし人生の終わりが近づいてくると、思った以上に余らせてしまっていた――そういう方が、相続の現場では実に多くいます。

「お金が足りなくなるのでは」と心配していた方が、結局使い切れないまま逝く。これは実にもったいないことです。

 では、積極的に使えばいいかというと、これも意外と難しいのです。ブランド品や高級車を買えば資産になってしまい、相続財産の中身の組み替えになるだけかもしれません。

 毎日高級レストランでいいワインを飲んでいたら、やがて飽きますし、体にもよくありません。年を取ればなおさらです。

 このように、「資産にならないお金の使い方で1週間過ごす」という課題を考えると、案外選択肢が絞られるのです。

 そこでおすすめしたいのは、「体験」にお金を使うことです。

 旅行、音楽フェス、スポーツ観戦、大切な人との時間。こうした体験は、資産として残りません。残るのは記憶と充実感だけです。物欲は一巡すれば飽きますが、体験の記憶は色あせません。