「社会派」という誤解
政治色ゼロのドタバタ劇

 全体を通しては皐月が殺された事件と、都内で連続して起こっている「消しゴム事件」を追っているが、各回では沼袋警察署の管轄内で発生した事件が捜査され、解決されていく。ミステリードラマでよく見られる構成である。

 ところで「選択的夫婦別姓」といえば、賛成か反対かで意見が対立する議論の一つである。

 最近ではTBSの山本恵里伽アナウンサーが、「お互いに現在の名字を変えずに家族になりたかったため」という理由で事実婚を選択したことが話題となった。選択的夫婦別姓制度が導入されれば、速やかに法律婚に移行する予定なのだという。

 夫婦別姓を選択できる制度に賛成する政党に左派が多く、強く反対する政党に右派が多いことから、右派と左派の意見対立が見られるトピックでもある。

 こういった事情もあり「夫婦別姓」という言葉だけで何らかの政治的メッセージをはらんでいると受け取った人もいるようだ。ただし『夫婦別姓刑事』は社会派ドラマではない。
 
 ドラマでは夫婦別姓制度に関するニュースが流れる場面もあるが、なぜこの制度が求められているのか、あるいは反対されているのかといった背景が語られるわけではないし、どちらかの主張を後押しするものではない。

 明日香の持ち物に「ヨモダ」と書いてあるクリーニング店のタグがついていたことから同僚たちに結婚がバレそうになる場面がある。このことから、二人は誠の姓を選択していると考えられる。ただし職場では明日香は「鈴木」を名乗っていて、これは通称使用ということになるのだろう。

 通称使用を巡ってはこれもまた議論がある問題だが、作品内では「通称使用」という言葉は出てこないし、その不便さや問題点が語られるわけでもない。逆に通称使用が奨励されるわけでもない。

 タイトルこそ『夫婦別姓刑事』ではあるが、実際は刑事の夫婦が同僚たちに結婚を隠して働いている設定のみが物語と紐づいている。