フアンが活用するのはリファレンスチェック。つまり、前職の上司や同僚など、過去に候補者と働いた人への問い合わせである。そのやり方が独特だ。

「私がいつも使う方法は、リファレンスチェックに戻り、候補者にするつもりだった質問を、過去にその人と働いた人たちにも尋ねることです。一瞬だけなら素晴らしい印象をつくることはできます。しかし、自分の過去から逃げることは難しいからです」

 ここにフアンの人間観がよく表れている。

 人は一瞬なら別人を演じられる。しかし、長年一緒に働いた人たちの記憶までは、簡単に変えられない。だから彼は、管理された面接室での印象だけではなく、その人が実際に積み重ねてきた仕事の履歴に目を向ける。

学力テストでは測れない
「本当に頭がいい人」の条件とは?

 では、その過去をたぐり寄せた先で、フアンは何を「優秀さ」と呼ぶのか。2026年1月、ポッドキャスト「A Bit Personal」で、司会のジョディ・シェルトンが尋ねた。

「これまで会った中で、最も頭のいい人は誰ですか」

 フアンは答えを拒んだ。

「その質問には答えられません」

 そして、一般に「頭がいい」とされる能力について、次の趣旨を語った。知的であること。問題を解けること。技術的に優れていること。だが、フアンは、そうした能力を今や「コモディティー」だと考えている。AIが、その領域を急速に処理できるようになっているからだ。

 では、フアンが単純な問題解決能力以上に評価しているものは何か。それは、まだ表面化していない問題を先に感じ取る力である。

 フアンは、角の向こうにあるもの(see around corners)を見通せる人を「本当に頭がいい」と表現した。その感覚は、データ分析、物事を根本から考える力(first principles)、人生経験、知恵、そして他人を感じ取る力の組み合わせから生まれるという。

 また、そうした頭のいい人はSAT(大学進学希望者を対象とした米国の標準学力テスト)でひどい点数を取る可能性さえあるとも語っている。テストで測れる能力と、現実の中で先を読む力は、同じものではないということだ。