答えを知るフアンがあえて質問
「仕事を熟知しているか」を問う

 こうした考え方は、エヌビディアの社内文化にも表れている。Business Insiderが匿名の現役・元社員8人に取材した記事によると、フアンによる厳しい質問攻めは、社内で「ジェンスン・グリリング」(Jensen grilling)と呼ばれている。

 元幹部は、次の趣旨を証言している。誰もが厳しい質問を受ける。自分の仕事を熟知していることが求められる。知識が曖昧(あいまい)な様子を見せると、フアンは問いを重ね、その人が何を理解していないのかを明らかにし、「そこをきちんと管理しなさい」と促す。

 興味深いのは、フアンがすでに答えを知っている質問を、あえて投げることがある点だ。ある関係者はその手法を、刑事コロンボが知らないふりをしながら、相手の理解や矛盾を探っていくやり方になぞらえた。

 その目的は、単に正解を答えさせることではない。相手が、その問題をどこまで理解しているかを見ることにある。

フアンが大半の時間を
質問に使っている理由

 フアン自身も、Armのポッドキャストでこう話している。

「私は一つの掘り下げた質問をして、その人がどう推論していくかを見るのが好きです」

 彼にとって、質問は相手を試す道具であると同時に、組織を動かすための指示でもある。

 2025年に出演したCNN「Fareed Zakaria GPS」のインタビューでは、フアンは、自分の指示の90%ほどが質問と混ざり合った形になっていると説明した。優れた質問をするには、考え、分析し、自分で推論しなければならない。CEOとして、彼は大半の時間を質問に使っているという。

 この男が問いを向ける先は、他人だけではない。自分自身にも、そしてチームにも向けられる。

成功したイベント後に
投げかけた「強烈な質問」

 1999年、エヌビディアが「世界初のGPU」と位置づけたGeForce 256を発売したころのことだ。Business Insiderによれば、発表イベントには好意的な反応が寄せられた。それでも、フアンがチームに投げた質問は一つだった。