都市型スーパーの必然性と、地方スーパーにおける落とし穴

 ただし、売り場改革はすべての食品スーパーで等しく成功するわけではない。ここに、立地や商圏、客層に応じた「収益設計」の難しさがある。

 実際、かつて総菜の強さで知られた地方のある食品スーパーにおいて、総菜の売り上げ構成比が12%を超えたことを機に、トレンドを追って入口正面へ総菜とベーカリーを配置する大改装を行った事例がある。

 しかし結果は厳しいものだった。総菜だけを買ってサッと退店する客(一品買い客)が急増した一方で、青果や畜産、日配といった他部門への「買い回り(クロス購買)」が激減。結果として客単価の大幅な低下を招き、店舗全体の採算が悪化するという課題に直面した。

 ではなぜ、サミットやライフといった都市型スーパーではこの改革が成功し、持続可能な戦略として機能するのか。カギは、「ターゲットの人口密度」と「地価高騰のプレッシャー」のバランスにある。

 東京都中野区の商業地公示地価(2026年)が前年比17.5%上昇し、一部地点では20%を超える上昇率を示したことに象徴されるように、都市部では地価の高騰が続いている。またライフムスブ田町店が立地する港区も再開発が進み、地価は全国でも高い水準にある。

 こうした環境のなか、都市型スーパーは高額な賃料や建築コスト、人件費を吸収しながら収益を確保しなければならず、固定費の負担は年々大きくなっている。

 一方で、都市部の単身者や共働き層は、素材を買ってイチから自宅で調理する比率が低く、むしろ「今日の食事のすべてを、即食、または半調理品(ミールキットなど)の組み合わせで完結させたい」というニーズが圧倒的に強い。

 つまり都市部においては、即食売り場の拡大は他部門の足を引っ張るリスクではなく、「総菜をフックに、青果のカットフルーツや水産の刺身、畜産のローストビーフ・半加工レンジ商品、つまり『即食同士の買い回り』を誘発し、客単価と店全体の粗利率を同時に引き上げる」という緻密な計算の上に成り立っている。

 地方と都市部では、店舗に求められる買い回りの定義(素材のまとめ買いか、即食の組み合わせか)そのものが根本から異なるのだ。

 一方、地方スーパーでは、即食だけを強化するのではなく、素材売り場との買い回りを促す売り場づくりが求められる。