答えは、赴任から帰国までの数年というライフサイクルの中にある。

 赴任したばかりの兵士にとって、基地の外は「不安の塊」である。言葉は通じない。何が出てくるかわからない。入店や注文に戸惑うこともある。そんな新参者が真っ先に頼るのが、全国どこでも同じ味、同じ清潔さ、同じ接客を約束する大手チェーンの「安心感」だ。

品ぞろえも豊富
タブレットで簡単に注文できる

 米軍準機関紙『星条旗(Stars and Stripes)』の日本向け地域メディア「Stripes Japan」の読者投票で、ココイチは2025年の「基地の外のベストレストラン」に選ばれている。紙面で、横須賀基地のクリスチャン・ゴンザレスは、タブレット注文の手軽さと品ぞろえを基地の外では完璧なシステムだと評した。

 サイトでは「ここのカレーは最高」「料理はどれを頼んでもハズレがなく、品ぞろえも豊富。タブレットで簡単に注文できる点も含め、基地の外で食事をするなら理想的な店だ」といった絶賛の声が紹介されている。異国で道に迷う不安を、タブレットが消してくれる。

タッチパネル1「CoCo壱番屋」横須賀本町3丁目店のタッチパネル
タッチパネル2「CoCo壱番屋」横須賀本町3丁目店のタッチパネル
「CoCo壱番屋」横須賀本町3丁目店のレジでの英語説明「CoCo壱番屋」横須賀本町3丁目店でレジに貼られた英語の説明文

 在日生活に慣れてくると、安心の店ココイチは「自己表現の場」へと変わっていくようだ。軍隊は上官に絶対服従する、徹底的に規格化された世界である。食堂の飯も管理されている。

 ところがココイチは違う。ご飯の量、辛さ、約40種のトッピング。すべてを自分で選び、自分だけの一皿を組み立てられる。先の壱番屋広報課によれば、「米軍関係者に最も人気のメニューはチキンカツで、それを2枚、3枚と重ねて頼む客も珍しくない」という。私が見たナンの男も、その自由を謳歌(おうか)する一人だった。命令されない時間に、命令されない一皿を自分の手で組み上げる。

「辛さレベル」が
兵士を惹きつける理由

 面白いことに、その選べる「辛さレベル」も、米軍関係者を引きつける理由の一つになっているようだ。ココイチの辛さは甘口から数字で細かく刻まれ、上へ行くほど挑戦の難度が増す。