「AI一帯一路」は異常気象PFから
中国の強みは安い開発コスト

 上海AI会議で習氏は、中国を中核とした多国間のAIインフラ整備を提唱した。すなわち、「AI一帯一路」構想である。

 具体策のひとつとして中国は、グローバルサウス諸国に「媽祖(MAZU)」という名のAI気象早期警戒プラットフォームを提供するという。現時点で30カ国へ提供する見込み。異常気象が深刻化する中、中国が主体となって、一帯一路の沿線地域をはじめ途上国の経済成長を支援する考えだ。

 WAICO参加国には研修プログラムも提供する。中国とロシアが主導する、ユーラシア大陸の経済安全保障機構「上海協力機構」の参加国にも、「AI協力センター」を設置する方針を表明している。

 中国の強みは、何といってもAI開発コストが安いことだ。中国のAI開発企業は、中国政府の支援をベースに、米国の最先端モデルを最大限に模倣(蒸留)し、低コストで推論モデルを訓練している。

 米オープンAIやアンソロピックの開発コストは、中国の数倍~数十倍といわれている。低コストで文明の利器を使えて経済社会の成長につなげられる、という中国の提唱に引き寄せられる国は増えるだろう。

アンソロピック最新モデル停止と
中国ムーンショット「Kimi」ショック

 これから米中のAI開発競争は熾烈(しれつ)さを極めるだろう。習氏のAI大国構想は、主要先進国にも大きな影響を与える。

 今年6月、トランプ政権は、アンソロピックの最新モデル「フェイブル5」の利用を一時停止した。その間に、利用料金が安く同等の性能を持つといわれる、中国のAIに需要が流れた。実際に、ディープシークやムーンショットAI、北京智譜華章科技のモデルを利用する先進国企業は増えている。

 7月17日には、ムーンショットAIが、最新推論モデル「Kimi K3」を発表した。すると、米国やアジアの株式市場でAIや半導体関連の銘柄が広く売られ、株価が急落する一因となった(いわゆるKimiショック)。習氏の宣言と合わせた、新たな中国AI登場のインパクトは大きかった。