この仮定の下では、たとえば1位と2位の対戦で「10回中8回」1位のチームが勝ったのか、「10回中5回」だったのかによって、1位と2位の間の「真の実力差」が異なるはずで、当然前者の方が「大きく隔たっている」はずである。このような比較をすべてのチームの間で行うことで、それぞれのチームの間の「真の実力」が推定できるようになる。その推定結果が「真の実力」をなるべく忠実に言い当てられる方法を見つければ、それがよりよい「尺度化」のための方法といえる。
「10回中何勝したか」で
本当の実力差が見えてくる
今、「真の実力」の値が図2-3の左端のようになっている8チームにおける10回のリーグ戦の対戦成績表があるとする。
同書より転載 拡大画像表示
たとえば1位チームと2位チームの「真の実力」の差は2であるが、7位と8位は4だけかけ離れているというように、実力差は等間隔とはなっていない。
このようなチームが対戦した結果、勝ち数も等間隔にならないのは当然のことで、実際、1位と2位での勝ち数の差は6であるが、7位と8位では13も離れている。このことは、7位と8位の間に大きな「実力の隔たり」があることを反映している可能性がある。
ここで私たちが行いたいことは、リーグ戦の対戦成績表から「真の実力」に近い値となるような「スコア」を計算する統一的・一般的な方法を見いだすことである。ちょうど一度限りのリーグ戦対戦表で「○」(勝ち)の数を数えて順位を求めたように、より「真の実力」の値に近い値を言い当てられるような尺度を求める方法を考えたい。
『テストと学力 何を測るのか、どう測るのか』(光永悠彦、岩波書店)
実は、このような対戦成績表に対して「真の実力」をよりよく言い当てられるような「尺度値」を求める手法として、心理学において「サーストンのケースV(ファイブ)」として知られた方法がある。
具体的には、たとえば6勝4敗、すなわち上位チームが60%の確率で勝った場合は標準正規分布の面積の60%を占めるようになる横軸の値を使う、という統計的な手法で尺度値を求めている。この方法を用いることで、たとえば「9勝1敗」のような極端な勝敗差となった場合に「あまり起こりそうもないことが起こっているのだから、尺度値も真ん中よりかけ離れた値となるように調整」することができるようになる。
詳細な理論的背景については割愛するが、尺度化をするうえでの仮定をおくにあたって「正規分布」という統計学で用いられる概念を応用することで、尺度化の手続きが明確化されるとともに、チーム間の実力だけではなく尺度値そのものも「真の実力」に近いものが得られるようになる。







