作中、運命のいたずらに翻弄され続けたナタリーが「人生なんて砂の城のようなものかもしれないわね/つくってもつくってもいつの間にか波がさらってしまう/いつも同じことの繰り返し……」という場面もありますが、確かにメロドラマの定番設定全込みの力作でした。
『デザイナー』が意志的人間たちによる愛憎劇だったのに対して、『砂の城』は状況に翻弄されるドラマであり、作者自身がナタリーをまだるっこしく思っていたと述べているのは、一条自身は運命を切り拓いていく意志と努力の人であるためでしょう。
ちなみにこの作品に一条の生活が投影されているとしたら、それは屋敷の光景だったようです。当時、一条は東村山市にフランスの田舎家風の洋館を建てて住んでおり、素敵な建物だったものの吹き抜けで暖房が利きにくくて寒いとか、床をレンガにした台所では、落とした食器が必ず割れる……など、洋館暮らしをしないと気づかないあれこれを体験していました。
一条ゆかりの70年代作品の多くは、愛の苦難を描いたメロドラマでしたが一条より上の世代で、同じくメロドラマの名手であるわたなべまさこや牧美也子の主人公がしばしば孤独を恐れる女性であるのに対して、ナタリーなど一部を除くと、一条の主人公は自分自身であろうとする努力の末に、他人が付いてこられない地点まで進んでしまった自分を厳粛に受け止めます。
そうした自己愛は決してナルシシズムではなく、孤独であることによって誰にも左右されない自分自身であるものの誇りを示していました。
名門高校の生徒会を舞台に
SF級の破天荒キャラが大暴れ
『恋愛少女マンガ全史――ラブコメと若者文化の変遷を探る』(長山靖生、筑摩書房)
そんな一条が、孤高性とギャグセンスを共に込めて描いたのが『有閑倶楽部』(『りぼんオリジナル』81年春の号~『りぼん』『コーラス』等2002年12月号まで断続連載)です。
この作品は名門高校の生徒会を舞台に、それぞれに桁外れのお嬢様、お坊ちゃまたちが巻き起こす(あるいは巻き込まれる)騒動を描いた愉快な作品で、一条自身はSFのつもりと述べていますが、確かにSFレベルに破天荒です。
そういえば筒井康隆にも小説『富豪刑事』があったなと連想したりもしますが、どちらも庶民とは無縁な超法規的エスタブリッシュメント子弟を主人公にしながら、嫉妬を誘わぬ爽快さで貫かれているのはさすがの力量でした。







