軍事力でアメリカと肩を並べた中国

 このうち、外交・安全保障で言えば、当然ながら、アメリカのトランプ大統領が、対イランでどのような動きに出るかは常に注目すべきだ。

 それに加えて、中国の習近平国家主席が、国際社会の目が中東に注がれている間に、着々と東シナ海や南シナ海を「中国の海」化し、AIの技術でも世界を主導しようとしていることにも着目しなければならない。

 まずは、7月6日、中国の原子力潜水艦がSLBM(戦略ミサイル)を太平洋の公海に向けて発射し、指定海域に正確に着弾させたことだ。

 中国が保有するSLBMには、射程約7200キロメートルの「巨浪(JL)2」や、射程1万キロメートル以上の「JL3」がある。どちらも核兵器を搭載することができる。

 もし、今回、発射したミサイルが「JL3」だったとすれば、去年9月、北京で行われた「中国人民抗日戦争・反ファシズム戦争勝利80周年軍事パレード」でお披露目された巨大なもので、アメリカ本土も射程に入る。

 SLBMの発射と成功は、5月28日、中国の海洋進出を阻止するため連携強化で合意した日本とフィリピン政府、そして何より、9月24日に予定される米中首脳会談に向け、トランプ政権に送った強烈なメッセージと考えていい。

 日本の高市首相やフィリピンのマルコス大統領に対しては、「東シナ海や九段線(13年前、中国が勝手に引いた南シナ海の領海線)内の海は、中国のもの」という主張だ。

 事実、中国は、日比首脳会談の翌日、「両国の交渉は完全に無効」などと批判し、武装した中国海警局の艦船を台湾東方沖まで進出させている。

 そしてトランプ政権に対しては、「我々は軍事力でアメリカと肩を並べた」「中国とアメリカは対等」という宣言である。

 今年5月14日と15日、北京で行われた米中首脳会談では、トランプ氏と習氏は「建設的な戦略的安定関係の構築」で合意しているが、SLBMの発射成功には、次のような意図が込められていると筆者は見る。

「3隻目の空母『福建』が就役し、弾道ミサイルや戦闘機、潜水艦の数など、東シナ海や南シナ海での軍事力は、すでにアメリカを上回っているが、今や世界全体でも負けない」

「仮にアメリカが、対イラン作戦のように中国本土の軍事施設を先制攻撃したとしても、我々は潜水艦からアメリカ本土を狙い焦土にできる。中国の力を侮るなよ」