AIでもアメリカをリードする中国
中国の脅威に関してもう1つ注目すべきは、7月17日から20日まで、上海の西郊賓館で開催された世界人工知能(AI)大会に習氏が出席したことだ。
6月15日に73歳を迎えた習氏は、北京から指示を出す機会が増え、最近では、国内外への出張を手控える傾向が見られる。
その習氏が、世界80カ国、1100社以上が参加して行われた最新の人型ロボットやAIに関する“知の祭典”に出席したことは、軍事力や経済規模だけでなく、「AIでも世界の覇権を…」という野望の表れにほかならない。
そのことは、習氏の大会での挨拶にも表れている。
「1本の弦では音は出ず、1本の木では森はできない。AIの発展は、ある1国の独奏であってはならず、世界的な協力による交響曲であるべき。中国は人類社会のより美しい未来を共に築いていきたいと願っている」
何とも「世界の優等生」的な挨拶である。
挨拶の端々に「包括」「協調」「共助」、それに「公正」といった言葉が散りばめられている。
それは、筆者からすれば、チベットやウイグルの人々の人権を蹂躙し、習指導部の方針に反対する声はメディア規制をして封殺してきた習氏の政治姿勢とは正反対と言うしかない。
習氏の挨拶は、自国の利益を優先してきたトランプ氏への明らかな当てこすりであり、台湾統一に乗り出す前に、中国は「包容力がある大国」で、自分こそが「平和を希求する主導者」というイメージを国際社会に植えつけようとするものだ。
この大会には、トランプ氏とは仲が悪いことで知られる国連のグテーレス事務局長まで出席している。習氏からすれば、「国連公認」という錦の御旗を得たのと同じだ。
今後、中国が、AIという世界秩序を揺るがしかねない武器の研究開発を主導することになれば、アメリカにとってはイラン以上の脅威であり、中国との関係が冷え切っている日本にとっても、成長戦略どころか産業の空洞化を引き起こしかねなくなる。







