ある会社は、毎年1億円の赤字が10年間続き、銀行にこれ以上融資できないと言われました。この会社の社長から受けたのは黒字化したいとの依頼。そこで、筆者は会社の実態を把握することから開始しました。社長の説明では、10%の原価低減の会社方針を立てて社内に展開しているとのことでした。

 ところが、実態は図のように、方針を受けた各部長のうち、ある部長は自分の部は原価とは関係ないと判断して方針を無視していました。

 ある部長は原価の理解が不十分で原価の低減方法が分からないため、原価低減の仕事が分からないまま部下(課長)に指示していました。指示を受けた課長は部長と同じく理解が不十分な状態で部下(スタッフや現場の組長)にその指示を流す。

 当然、実務を担当しているスタッフや組長たちは原価を低減できません。肝心の経理部の部長は「私の部の仕事は会社の決算・財務会計を行うことです。原価については担当していません」と言い出す始末です。

 結局、社長の出した会社方針である10%の原価低減を実行している社員はこの会社に1人もいませんでした。このような実態だったので10年間も赤字が続いていたのです。

 こうした日本企業は珍しくありません。似たような会社は数多くあります。経理部の仕事は会社の決算・財務会計・予算管理を行うことだけですとか、予算管理は行っていますが、原価は経理部の仕事ではありませんとかいう会社が少なくないのが実態です。