世の中をあっと言わせる偉業を成し遂げた人は、自分の仕事をどう捉えていたのか。サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本映画史上初のグランプリを受賞し、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓した長久允氏の思考から辿ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

研ぎ澄まされた基準を持っている

 圧倒的な結果を出す人には、最初から特別な才能や人脈があったのだと思ってしまうことがあります。

 世界で評価される人、業界で突き抜ける人、誰もが認める成果を出す人は、自分とは違う場所からスタートしているように見えるからです。

 確かに結果だけを見れば、その人は最初から圧倒的だったように見えます。

 しかし、その仕事が始まる前にあったのは、才能の証明でも、成功の保証でもなく、「自分はどうしたいか」「どこまで真剣になれるか」という、かなり研ぎ澄まされた基準だったのかもしれません。

冷笑には応じなくていい

 長久允さんは、サンダンス映画祭で日本人で初めてグランプリを獲るという、まさに世界的な成果を出した人です。

 その長久さんの著書を読むと、圧倒的な結果を出す人の仕事前のマインドセットが見えてきます。

 長久さんはこう言います。

 本当のことしか書かない

 誰かの冷笑は無視をしましょう。そいつはセンスがない、ただの意地悪です。
 やりたいことをやるべきなのです。「恥」は捨てる。丸裸になったらいいのです。笑う奴が間違ってる。

 これは、気合いの話ではありません。世界で評価されるものを作るためには、まず自分の中にある本当のことから逃げない、という態度の話です。

 多くの仕事では、手を動かす前に、つい他人の目を考えてしまいます。

 これを出したら笑われないか。幼稚だと思われないか。ビジネスとして通用するのか。もっと賢そうに見せたほうがいいのではないか。

 そう考えるうちに、本当はやりたかったことや、本当は言いたかったことが、少しずつ薄まっていきます。

 しかし、圧倒的な成果を出す人は、最初にそこを間違えないのだと思います。
 どう見られるかより先に、自分にとって本当かどうかを確かめる。笑われないものではなく、やらずにはいられないものを選ぶ。

 評価されそうな形に整える前に、自分の中にある芯を見失わない。

きれいにまとまっていても強さはない

 長久さんは、ご自身の職業についてもこう語っています。

 脚本家や映画監督は、もしかしたら「職業」ではなく、「生き方」に近いように思うのです。

 圧倒的な成果を出す人にとって、仕事は単なる作業や肩書きではありません。

 それだけ自分と一体化しているということなのかもしれない。自分が何を信じ、何をおもしろがり、何を世の中に差し出したいのかが、そのまま仕事に出てしまうものです。

 長久さんは、こうも言います。

 ビジネスになっているかどうかは問題ではありません。
 自分を信じて書いていたら勝手にそのうちビジネスになるから安心していい

 もちろん、仕事である以上、収益や成果を無視していいわけではありません。けれど、最初からビジネスとして通りやすい形だけを狙うと、誰かの真似や、どこかで見たようなものになりやすい。

 結果として、きれいにまとまってはいても、世界を驚かせるほどの強さは生まれにくいのです。

圧倒的な人の覚悟

 圧倒的な結果を出す人は、最初から世界を狙って小器用に調整している人ではありません。

 むしろ、自分の中にある本当のことを、恥を捨てて、丸裸になるくらいの覚悟で差し出している人でした。

 それが結果として、代えがきかない仕事になる。そして、遠く離れた誰かの心にも届くものになる。

 だからこそ、仕事に取り掛かる前、まずは自分に問い直す必要があるのでしょう。

 これは本当のことか、自分は本当にこれをやりたいのか、
 恥ずかしさや冷笑を恐れていないか、と。