さて、日本事業の好調について構造を見てみます。売上高は先述のように約2割増ですが、その増加はほぼほぼ客数の増加で支えられています。一方で客単価は前年比1~2%程度増とそれほど大きな変化はありません。

 つまり値上げをしていないので客単価は変わらず、一方で値上げをしていないことで、先行して値上げをしてきた他の飲食業態から庶民がサイゼリヤに利用をシフトする動きが明確に出てきているのです。

 ただ増収増益とはいえ、業績にはコスト増要因が大きな影響を与えています。一番大きいのが円安の影響で、次に肉類の値上げ、そして物流費の増加、この3つを合わせると第三四半期までの9カ月間で30億円も営業利益を押し下げる赤字要因になります。

 それでメニュー構成をより原価の低いものに変更し、全社的に生産性を上げることで約60億円のコスト減を達成してきた。値上げにつながるポイントはおそらくこのカイゼン努力で、これだけの生産性向上を実現してきたからには、もうこれ以上、生産性では増益を達成できないぎりぎりまで来てしまったということでしょう。

 過去3年間、日本経済全体では賃金上昇も実現しています。「給料が増えない中で」という値上げをしない理由が薄らいだ前提で、サイゼリヤも成長のためにいよいよ値上げを検討するステージに入ったということでしょう。

【視点3】
20円の値上げで客離れは起きる?

 さてサイゼリヤが検討をしている「メニューの300~600円を320~640円に改定する」という値上げ計画が実行されると、これまで好調だったサイゼリヤの国内事業はどうなるのでしょうか?

 数字にすると7%の価格増ですが、その大半は、日本経済全体を襲っているインフレのせいで2年後には帳消しになっているのではないでしょうか。

 サイゼリヤは非常に少ない従業員数で店舗がまわる設計になっているのですが、その生産性を上げ切った今段階では、労務費は世の中並みに上げていくしかありません。水道光熱費は原油価格の上昇と円安で、継続的に高くなっていくでしょう。