後追い商品ばかりでは
先頭には戻れない

 しかし、この戦い方では先頭に戻れない。先に始めた会社には、商品のイメージ、運用の経験、顧客データ、取引先との関係が積み上がっている。後から似たものを出しても、同じ場所には立てない。追いつく前に、相手は次へ進む。

 かつてファミマとローソンが、何年たってもセブンに追いつけなかった理由もそこにある。セブンが新しい弁当、おにぎり、総菜、コーヒー、PBを出し、競合がそれを追う。追いついた頃には、セブンは別の売り場を作っていた。

 今、その立場が逆になった。

 ローソンはAI.COと顧客データを使い、発注、値引き、販促をつないだ。「盛りすぎチャレンジ」も、単なる増量ではなく、ローソンへ行く理由になった。ファミマは衣料を新しい柱に育てた。両社はまだ日販でセブンに届かない。だが、自分たちで作った武器を持っている。

 セブンには今も強い物流網があり、工場があり、商品を大量に売る力がある。だからこそ危ない。強い会社は、過去の蓄積だけでしばらく持ちこたえられる。客数が減っても、値上げで売り上げを保てる。後追い商品でも一定量は売れる。その間、衰えが見えにくい。

 私が憂えているのは、Tシャツやおにぎり一つの話ではない。セブンが、自分で市場を作る会社から、他社の正解を集める会社へ変わったことである。

かつてのセブンにはあった
商品開発力

 かつてのセブンは、金の食パン、淹れたてコーヒー、セブンプレミアムを通じて、コンビニの商品はここまで良くなるという基準を作った。他社がマネするのは、いつもセブンだった。

 その商品開発力は、どこへ行ってしまったのか。

 マネを続ければ、明日の大敗は避けられる。だが、明後日の勝利は来ない。セブンが取り戻すべきものは、PayPayの会員数でも、ローソンのAIでも、ファミマの衣料品でもない。客がまだ言葉にしていない不満を見つけ、競合より先に商品へ変える力である。

 それを取り戻さない限り、ローソンとファミマの追い上げは止まらない。この流れが変わらなければ、苦戦は長く続くだろう。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長