ホットハッチが40年前の若者を
熱狂させた理由

 一方、若者以外も含めた一般消費者全体のトレンドとしては、1980年代当時は日産の「レパード」、トヨタの「ソアラ」「マークII」などの「ハイソカー(ハイソサエティカー)」と呼ばれる高級車の人気が高かった。

 また、ホンダの「プレリュード」を頂点とする「デートカー」ももてはやされた。トヨタの「セリカ」、日産の「フェアレディZ」などのスポーツモデルも支持されていた。

 しかし、どの人気モデルも、運転免許を取り立ての若者が簡単に手を出せるような価格ではなかった。当時、ハイソカーやデートカーを「いつかこれに乗るぞ」という思いで眺めていた人も多いだろう。

 そうした若者たちの需要に“刺さった”のが、比較的買いやすい価格であり、コンパクトで楽しいホットハッチだったのだ。

 さて、スーパーワンに話を戻そう。スーパーワンは、ホットハッチであるシティターボIIのエッセンスを巧みに取り入れている。

 前後のブリスターフェンダーはその象徴であり、フロントのスポーツシートもシティターボIIのシートに近い形状になっている。シティターボIIの外観に近づけるための「ブルドッグスタイル」という純正カスタムパーツも販売されている。

「BOOST」ボタンを押してアクセルを踏み込んだ時の、身体がシートに張り付くような加速感は、一度味わうと病みつきになる。この感覚は、さながらシティターボIIのドッカンターボのようだ。

ホンダの小型EV「スーパーワン」はなぜ売れた?40年前の名車「シティターボII」のDNAを継ぐ強烈な加速感ホンダ「スーパーワン」 (出典:ホンダ)
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 ただ、もちろん40年前のクルマとは異なる部分もある。代表的なものが安全性だ。

 先ほどスーパーワンには「体がシートに張り付くような加速感」があると表現したが、シティターボIIのような恐怖感はない。

 スーパーワンは床下に重いバッテリーがあることで重心が低く、さらに最新の電子制御により「BOOST」モードでも安心してアクセルを踏み込める。

 また、スーパーワンのモーターは最高出力90馬力(「BOOST」モード時)と、今では200~300馬力を発揮するEVやハイブリッドカーも珍しくない中で、実は控えめな性能である。

 非力とすら思えるのに、先述した加速感や走る楽しさを味わえるのは、軽量ボディが生むクルマとの一体感と、思い通りに操れる操作性の高さの恩恵だ。