日産「サクラ」やBYD「ラッコ」とは違う
「小型の普通車EV」という魅力

 これまで述べてきた点を踏まえると、スーパーワンは「街乗り」などで利用したい層だけでなく、ホットハッチのファン層に訴求するために、あえて往年のエンジン車を想起させる仕様を取り入れたのだろう。そして、この工夫が冒頭のヒットにつながったと言える。

 筆者が知るホットハッチの愛好家は、口を揃えて「信号が青に変わってから走り出したり、交差点を曲がったりするだけで楽しい」という。スーパーワンはまさに、そうした層にドンピシャの性能だ。

 若い頃にシティターボIIをはじめとするホットハッチに憧れた人たちが、子供が独立したのをきっかけにダウンサイジングで選んだり、自分用の“遊ぶためのクルマ”としてスーパーワンを選んでいる――。そんな可能性がありそうだ。

ホンダの小型EV「スーパーワン」はなぜ売れた?40年前の名車「シティターボII」のDNAを継ぐ強烈な加速感ホンダ「シティターボII」 (出典:ホンダ)
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 ちなみに、スーパーワンはEV補助金制度の恩恵が受けられるため、現代の若者でも手を出しやすい点も魅力だ。

 スーパーワンの車両本体価格は339万200円(税込)だが、国の補助金(上限130万円)の対象になる。自治体の補助金と併用すれば、120万円程度で購入できる場合もある(登録費用などは除く)。その上で「残価設定型クレジット」を使用すれば、頭金やボーナス返済の金額次第では、月々の支払額を低く抑えられる。筆者の試算では月々3800円と、“飲み代”程度の金額になったから驚きだ。

 今の日本のEV市場に目を向けると、日産の軽EV「サクラ」が根強い人気を維持し、中国のEV大手・BYDが軽EV「ラッコ」を投入したばかりだ(2026年7月28日発売)。スズキも2026年度中に、軽乗用EVの市販化を目指している。

 今後はさらなる競争激化が予想されるが、これらはあくまで軽自動車だ。シティターボIIからホットハッチの楽しさを受け継いだ「普通車」のスーパーワンは、既存の市場では珍しい、EVの新たな方向性である。

 他メーカーも対抗し、かつてのホットハッチのように「走るのが楽しい小型EV」というジャンルが盛り上がれば、ユーザーの選択肢が広がり、日本におけるEV人気がさらに高まるはずだ。