菓子なのになぜ?
アニメ制作に乗り出したワケ
パイの実のもう一つの変革が、商品ブランドの世界観を拡張する取り組みだ。
パッケージに描かれた2匹のリスはもともと細かい設定を持たない存在だったが、数年前から「名前を付けてほしい」「この家は何ですか?」といった声が消費者から寄せられるようになった。
この変化について、久保田氏は漫画やアニメのキャラクターなどを応援する「推し活」の文化が影響しているのではないかと捉え、パイの実を支持してもらうためには、世界観をより強く、具体的に打ち出したほうがいいと考えた。
そこで24年にはキャラクターを「パイル」「ロクシー」と命名し、初めての絵本「パイの実 森の絵本 いっしょって いいね」を刊行した。
そこからさらに一歩踏み出したのが、アニメ制作だ。ユニークなのは、広告代理店などに丸投げしなかった点である。
台本もない状態からスタートし、キービジュアルの制作から公開時期の設計、グッズ展開、映画館でのPR施策まで、基本的に全てを社内のメンバーが手探りで組み立てた。アニメーション監督や声優などの制作陣も自らオファーして回ったというから驚きだ。
アニメ化の狙いは、菓子売り場という限られた消費者接点を超え、キャラクターやグッズを通じて日常生活の中にブランドとのタッチポイントを増やすことにある。本原氏は「いろいろな人のライフスタイルの中に入り込むかが、今の時代は何より大事な戦略です」と強調する。
商品パッケージの裏側にも漫画が描かれている Photo by M.F.
チョコレート市場という限られた分野の中で、新フレーバーを投入し続けることによりビジネスを伸長させてきたパイの実は、ここにきて、パイそのものの魅力を掘り下げることと、菓子の枠を超えた世界観づくりという取り組みを同時に進めている。
長年培ってきた代替の効かないブランドとしての強みを、どのように新しい領域へとつなげていくのか。パイの実の次の一手に注目したい。







