写真提供:FOOD&LIFE COMPANIES
大手回転寿司チェーン各社は、コスト削減のために、業態の象徴である回転レーンの廃止を進めている。ところが最大手のスシローは、業界の動向とは真逆の、デジタルでの回転レーン再現に巨額を投じてきた。その結果生み出された新たな回転レーン「デジロー」は今、急拡大を続けている。連載『ヒットの裏側』では、顧客の楽しさを最優先に考え、ファミリー層の支持を得た、逆転のDX戦略を解剖する。(ダイヤモンド編集部 大日結貴)
デジロー開発の原点
回転寿司の楽しさを画面上で
回転寿司チェーンの最大手あきんどスシローが展開する「デジタル スシロービジョン」、通称「デジロー」は、65インチハーフの巨大な大型タッチディスプレーシステムだ。
回転寿司は元来、実際の寿司が回転レーンに乗って流れ、客は食べたいと思った寿司を取るというシステムだ。客にとっては寿司を食べることのほかに、流れてきた寿司を選ぶ楽しさも、業態の最大の特徴であり魅力だった。
そんな業態の生命線である“流れる寿司”を、デジタル化してしまったのがデジローだ。さながら“デジタル回転寿司”である。
デジローは2023年9月にスシローで初導入された。その後の24年7月から本格的な全国展開が始まり、2年弱で導入店舗は急速に伸びた。現在は178店舗(26年4月末時点)に導入されている。
デジロー開発の背景には、回転寿司業態を揺るがす、顧客行動の変化があった。これまで親しまれてきた、レーンを回る寿司の中から好きなものを直感的に取るスタイルから、座席のタッチパネルで目当ての商品を直接注文するスタイルへの移行である。各社は効率性を重視してオーダー専用レーンのみを設置し、“回転しない回転寿司”へとかじを切る企業も増えていた。
一方スシローはコンベヤーベルトこそが回転寿司のアイデンティティーであると信じ、設備として残し続けてきた。1984年、創業者の清水義雄氏が回転寿司のシステムを取り入れたのも、そこに顧客にとっての楽しさがあったからだった。
顧客の注文スタイルの変化に合わせたDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組みつつ、回転寿司本来の魅力をいかに残すか。
そんな二律背反した難題に直面したスシローが導き出した答えが、大型デジタルパネルを使った新たな注文システムだった。
開発責任者として取り組んだのが、入社10年目の中岡大輔氏(現広告宣伝部CXM・デジロー企画課担当課長)だ。中岡氏は合理性を追求してコンベヤーをなくすだけではなく、最新のデジタル技術を使ってその“出会いの楽しさ”をもう一度画面上で再現したいと考えた。回転寿司の原点に立ち返りつつも、最新の技術で再現し、なおかつパワーアップさせる。それでできたのがデジローだったのだ。
「普段自分が食べないものが流れてきて、おいしそうだから食べてみようという偶然の出会い。そして、目の前をお寿司が回っていく視覚的な楽しさ。それがあるからこそ、回転寿司は日本の食文化として広く受け入れられてきたのです」
こう中岡氏は話す。デジローは一見すると、単なる最新のオーダー設備の導入に見えるかもしれない。しかし、この巨大なデジタルパネルの裏には、前例のないプロダクトを形にするための試行錯誤が隠されていた。開発の陣頭指揮を執った中岡氏の話から、開発の裏側に迫る。







