最初の3カ月は
「教わる期間」と位置づける
これとは逆に、伸びる40代は着任後最初の3カ月を、成果を出す期間ではなく、学ばせてもらう期間と位置づけています。
私が優秀だと感じる人は、新たな部署で辣腕を発揮する前の段階でとにかく徹底して謙虚です。「この部署では新人なので、オペレーションの細かいところから教えて下さい」と、年下の部下や役職が下の相手に頭を下げて教えを乞います。
聞き方の工夫もあります。「なぜこんなやり方をしているのか」と問えば詰問になりますが、「このやり方にはきっと理由があると思うのですが、教えてもらえますか」「このチームで大切にしているルールはありますか」と尋ねれば、相手は気持ちよく背景を語ってくれます。
そもそも受け入れる側は、どんな人が来るか分からない以上、「次に来る人は自分たちが築いてきたものを壊してしまうかもしれない」と身構え、警戒しているものです。定期的にメンバーや役職者が入れ替わる職場では、自分はそういう人間ではないと着任後の行動で示せるかどうかがカギになるのです。
ですから、着任直後に優先すべきは、改革ではなく基本的信頼、いわゆるベーシック・トラストの構築です。まずは自分の半径3メートル以内にいる部下や関係者との信頼を3カ月かけて固めていく。そこに心理的安全性が生まれて初めて、メンバーは新たな管理職に対して、必要な情報提供をしたり、その後の改善提案を受け入れたりするようになります。
この姿勢は、社外パートナーや協力会社に対しても同じです。長年付き合いのある取引先を、定例会で「出入りの業者」扱いすれば、築かれてきた関係は台無しになります。既存のメンバーは、新しい上司が社外の相手にどう接するかを驚くほどよく見ています。年下にも社外にも敬意を持っている人だと分かれば、この人は自分たちの味方だという安心感が生まれるのです。
謙虚さと機嫌取りは
似て非なるもの
ただし、メンバーから学ぼうとする謙虚さとメンバーの機嫌を取っているだけの状態は似て非なるものです。違いは成果にコミットしているかどうかにあります。その部署を本当によくするつもりで来た人は、メンバーの話を聞きながらも、心のうちに確かな野心を持ち、変えるべきと判断すれば提案をし、そのために率先して動きます。
一方、数年先に出向が決まっていたりして、腰掛け的にその場にいる人は、部下やチームとの馴れ合いに終始します。この人は何のために来たのか、本気ではないなと現場からたちどころに見抜かれてしまいます。
もう一点、重要なことは、現場のキーパーソンとなる人を掌握することです。新卒でその部署に配属された若手が数年で中堅になって残り、その部署の歴史も含めて現場を最もよく知る人物となっているケースもあります。この中堅の人たちの心をしっかりつかめるかどうかも異動先での成否を分ける大きなポイントになります。
情報と信頼を得たあとは、少しずつ提案しながら組織を変えていけばいい。そうすれば、異動の1年後には、自然に発言力も影響力も備わっています。
結局のところ、異動先での成功は、以前の部署での実績とは関係ありません。会社が異動を通じて見極めているのは、新しい環境で、年下にも社外の相手にも敬意を払い、謙虚にその現場をゼロから理解して、再び成果を上げられるかどうかです。環境への適応力こそが問われているのです。








