番組収録が行われるスタジオには、最先端のシステムキッチンが備えられていた。先出の本田は、師匠がこのハイテク機器を扱えるのかと肝を冷やしたという。このときのテーマとなった食材は「ジャガイモ」。それに対し、小林が選んだメニューは家庭料理の王道「肉じゃが」だった。
小林は使い慣れたフライパンと鍋、そして普通の炊飯器だけを駆使してそれを調理した。複雑な機能を持つシステムキッチンの操作は、すべて番組側のアシスタントに任せたという。結果、彼女はハイテク機器に惑わされることなく調理に集中し、見事に鉄人・陳建一相手に勝利を収めたのである。
本来、炊飯器は「炊飯」と「保温」があれば事足りるはずだ。だが、多機能化の波はそれを許さなかった。タイマー機能が加われば、時刻設定のために「時」「分」「予約」「とりけし」といったボタンを、最低限、増やさざるを得なかっただろう。
新機能を売りにするたび
ボタンの数が増えていく
そして、こうしたパネルのボタンの状況を一変させたのはメニューボタンの登場だった。
ひとたびこのボタンが生まれると、その階層の中には「エコ炊き」「白米」「極うま」「冷凍ご飯」「玄米」「おかゆ」「調理」「ケーキ」に加え、「しゃっきり」「もちもち」「極上」「熟成」「おこげ」など、多彩なモードが詰め込まれるようになった。メーカーは物理的なボタンの数を気にせず、いくらでも機能を放り込めるようになったのだ。
こうした無秩序な状況に比べれば、「炊飯」ボタンを2度押すことで「無洗米モード」になるといったあたりのユーザーインターフェースには、ボタンを増やしたくないというエンジニアの工夫、または、増えすぎる機能追加への抵抗のあとが見て取れる。







