日本の「現状維持」を重視する経営者たち
続いて、キオクシアの株価について見ていこう。上場時の初値は1440円だったのが、今年6月には10万8700円の高値を付けるなど、キオクシアの株価は急騰した。
一方で昨年の秋ごろから、ベインは徐々にキオクシア株を売却し利益を確定していった。7月上旬時点で、ベインは保有した全株を売却。結果的に多額の利益を手にした。
日本企業にとって重要なことは、ベインの手腕に学べることがあれば、謙虚に吸収するスタンスを持つことだ。というのも日本企業では、まだまだ現状維持を重視する経営者も多い。
現状維持に固執する要因としては、バブル崩壊後の苦境の影響が残っている。当時、株式や不動産の価格は急速に下落した。1992年ごろから、不良債権処理に長い時間を要することになった。
多くの企業は、雇用の維持を優先せざるを得なかった。政府は公共事業関係費を積み増し、ハコモノや道路で建設業界の雇用保護を重視した。
その後は、事実上のゼロ金利、さらにはマイナス金利政策を導入して、デフレ脱却を目指した。経営者も従業員も、そして政治も、じっと我慢していればいずれ景気は良くなると信じた。
ところが、景気は思ったように回復しなかった。むしろ、世界経済のデジタル化、半導体などの設計開発と製造の分離(水平分業の加速)などの一大変化が起きた。日本経済全体が、その変化に取り残された。その結果、わが国は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に陥った。
経営者はリスクを取るのを躊躇(ちゅうちょ)する傾向になり、企業の成長性を低下させる要因になった。08年度~25年度の、日本の上場企業の営業利益率が6%前後で横ばいだったことからも、その傾向は確認できる。
日本経済が長期停滞に陥った一方で、海外ではスマートフォン、SNS、デジタル化、EV(電気自動車)、さらにはAIといった分野で急成長を遂げる企業が増えた。代表例として、米エヌビディア、米アンソロピック、中国BYDなどが挙げられる。中には、短期間で世界シェアを手に入れ、市場を寡占するケースもある。
そうした企業に共通するのは、トップの意思決定が明確なことだ。アップルの故スティーブ・ジョブズ、サムスン電子の中興の祖と言われた故李健熙(イ・ゴンヒ)、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、BYDの王伝福(ワン・チュアンフー)などは代表格である。







