さらに、スキャン作業に失敗したまま商品をレジ袋などに詰め、気づかずに店を出てしまえば、悪意がなくても万引きを疑われかねない。これは、まるでデスゲームのごとく過酷なルールだ。ただ、利用者(消費者)の側は、このような厳しいルール設定について説明を受けたつもりも、積極的に同意したつもりもないのだ。

テプラだらけのマシンが示した
本部と店舗の対立構図

 ロンドンのスーパーマーケット同様、日本においても商業的な空間の中で無人の機械が登場し、セルフレジのようなユーザーインターフェースを備える機械が増えた。

 その10年ほどの出来事の中で、もっとも日本人の記憶に刻まれているのは、セブンイレブンがコーヒーを導入した際に、そのコーヒーマシンに貼られた無数のテプラシールの写真ではないだろうか。

 著名なクリエイティブディレクターが監修したそのマシンは、極めてシンプルでスタイリッシュな外観をしていた。操作ボタンの表記は、英語で「HOT」と「ICE」。サイズは「R(Regular)」と「L(Large)」。無駄な装飾を削ぎ落とし、白を基調とした洗練された見た目に仕上がっていた。ネットで拡散され話題になったのは、そのマシンのボタンの周囲に「テプラ(ラベルシール)」がベタベタと貼られた様子が写された写真だった。

 この写真は、ネット上で「デザインの敗北」と呼ばれて広く拡散された。「HOT」の下にはカタカナで「あったか~い」、「ICE」の下には「つめた~い」。さらに「R」には「ふつう」、「L」には「大きい」とあり、値段もシールで補足されて追加されている。

 たしかに、英語の「R/L」の表記は、日本ではあまりなじみがない。「大小」もしくは「ラージとスモール」といった表記のほうがなじみ深い。コーヒーマシンに貼られたテプラシールは、戸惑うかもしれない高齢者を含めた客への配慮、もしくは、実際に混乱が生じていたことへの緊急の対応策だったのだろう。