単純に捉えれば、ルールを徹底させようとする本部が持ち込んだ使いにくいシステムと、運用をする店舗との対立構図を見て取ることができる。

カップを自動判別し
機械が人に合わせる設計へ

 そもそも、このコンビニカフェのシステムには、手順上の矛盾があった。客はまずレジカウンターで口頭でコーヒーを注文し、代金を支払って「空のカップ」を受け取る。つまり、この時点で、商品の選択と支払いは完了している。にもかかわらず、客はカップを持ってマシンの前に立ち、再びボタンを選んでコーヒーを注がなければならない。

 レジですでに注文を済ませているのに、機械の前でもう一度商品選択をやり直しさせる。この「二度手間」は、操作に不慣れな客を混乱させる要因となる。誰でも直感的に使えるべきセルフサービス機において、客に2度の判断を強いる仕様は、導線設計として配慮が不足していたと言わざるを得ない。

『機械ぎらい』書影機械ぎらい』(速水健朗、集英社)

 ただ、こうした問題点は、2019年ごろに導入された新型マシンで解消された。新型機にはセンサーが搭載され、客が置いたカップの種類(サイズやアイス・ホットの違い)を自動で判別し、適切なコーヒーを注ぐ仕組みへと進化した。テクノロジーによる自動化が、人間側の負担を消滅させた好例だ。

 一方でおもしろいのは、この新型マシンの操作パネルが、物理ボタンから全面タッチパネル式に変更されたことだ。その解決策は、よくも悪くも完璧だった。

 第1には、システムの矛盾。これはボタンそのものをなくすことで解消された。第2に、ノイズ(テプラ)の問題。これは全面ディスプレイ化することで、物理的にシールを貼る隙をなくして解消された。

 この改良は、単なる利便性の向上にとどまらない。物理的な「隙間」をなくすことで、現場のアナログな介入の余地を完全に排除したのだ。これは、機械と人間との関係の行く末を決定づけた転換点として、のちの世から顧みられるような瞬間だったのかもしれない。