セブンがPayPayと「巨大経済圏」を構築へ!異例の出資受け入れの陰に決済・デジタルで周回遅れの焦燥!?加盟店オーナーからは冷ややかな声も

流通と金融、通信、運輸など各業界を横断して構成されるポイント経済圏。長年に渡って覇権争いと合従連衡が繰り広げられてきたが、その趨勢を一変させ得る巨大連合が誕生した。セブン&アイ・ホールディングス(HD)は7月31日、ソフトバンクやPayPay、三井住友カードからそれぞれ1000億円の出資を受け入れる資本・業務提携を発表したのだ。今後、各社の強みを持ち寄り、ポイント経済圏を強化して顧客の囲い込みを図るとみられる。連載『流通・小売り フロントライン』の特集『セブン×PayPay 最強連合の衝撃』の本稿では、巨大連合が発足の経緯と、目指す将来像を詳報する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

セブンがPayPayとの提携発表
巨大連合発足の陰に焦燥感?

「ポイント経済圏」の覇権争いに、新たな号砲が鳴った。その中心に躍り出たのは“コンビニ王者”、セブン&アイ・ホールディングスだ。

 セブン&アイとセブン-イレブン・ジャパンは7月31日、ソフトバンクやPayPay、LINEヤフー、三井住友カードとの間で戦略的パートナーシップを結んだと発表した。セブン&アイはソフトバンク、PayPay、三井住友カードの3社からそれぞれ1000億円ずつ出資を受け入れる。出資比率は3社とも約2.27%(計約6.8%)となる見通しだ。

 狙いは明確だ。国内のセブンイレブンは、2万店超の店舗網と、1日約2000万人にも上る顧客接点を持つ。そこにユーザー数が国内最大級のキャッシュレス決済であるPayPayと、AI(人工知能)やロボティクス技術を持つソフトバンク、コミュニケーションツールとして圧倒的ユーザー数を誇るLINEヤフー、クレジットカード大手の三井住友カードが加わり、巨大連合を構成する。各社の顧客基盤やキャッシュレス決済、ポイント施策の知見を組み合わせる。

 とりわけインパクトが大きいのが、国内最大級のポイント経済圏の誕生といえる。今回の提携では、セブン&アイの会員基盤である「7iD」(登録者数約3900万人)と「PayPay ID」(登録者数7400万人超)を統合する。顧客基盤は単純合算で1億を上回り、店舗で「PayPayポイント」や、三井住友カードの「Vポイント」を付与する。

 セブン&アイは7月31日のプレスリリースの公表とともに、スティーブ・デイカスCEOの動画メッセージを公開した。デイカス氏はメッセージで今回のパートナーシップについて、「次世代のコンビニエンスを再定義する大きな一歩だ」と胸を張った。

 もっとも、巨大連合の誕生という大きな一歩の裏には、セブン&アイが抱えてきた焦燥感があったはずだ。足元で競合のローソンやファミリーマートが他社とのアライアンスを巧みに進め、増収増益を確保する一方で、セブンは増収減益の苦戦が続いていた。

 なにより、セブン&アイは2019年に「7pay(セブンペイ)」で大規模な不正利用が明らかになり、開始からわずか3カ月でサービス停止に至ったという“敗戦”の歴史もある。それ以降、キャッシュレス決済やデジタル活用による次世代店舗の開発、来店客の購買データの活用によって効果的な販促につなげるリテールメディア領域は、セブン&アイの弱点であり続けた。

 セブン&アイはかつて、POS(販売時点情報管理)システムを小売業界で初めて導入するなど、システムやサービスの開発は自前主義を貫いてきた。今回のパートナーシップの背景には、見方を変えれば、最先端のデジタル技術や決済サービスなどを自前で手掛けるのは難しいとの現実がある。

 次ページでは、セブン&アイが自前主義を捨て、巨大連合への合流を決めた経緯を振り返る。今回、巨大連合に参加する各社には、それぞれ思惑もある。各社の幹部への取材などを基に、巨大連合が目指す方向性も明らかにする。一方、ステークホルダーの反応は様々だ。市場関係者から漏れ聞こえる懸念のほか、セブンイレブンの加盟店オーナーの反応なども明らかにしていく。