雪の上で横たわるアザラシの赤ちゃん写真はイメージです Photo:PIXTA

モフモフとした可愛さで人気の、ゴマフアザラシの赤ちゃん。実は、親から「餌の食べ方」を教わらないまま、厳しい自然界に放たれるのだという。旭山動物園の人気展示「あざらし館」の誕生秘話とともに、獣医師が目撃したアザラシの驚きの生態を紹介する。※本稿は、霊長類学者・人類学者の山極寿一、獣医師の小菅正夫『動物はふしぎ』(ポプラ社)の一部を抜粋・編集したものです。

獣医がアザラシのプールで
泳いで発見したこと

山極:小菅さんは、これまで動物園でいろいろな動物と付き合ってきましたよね。動物たちの好奇心については、どう感じてます?

小菅:いろいろな動物を見てきて、一番好奇心があるなと思った動物は、実はアザラシなんですよ。

山極:へぇ、そうですか。

小菅:僕は旭山動物園時代、アザラシのプールで泳いだことがあるんです。

 アザラシは陸にいるとき、僕から逃げてばっかりなんです。陸上だと人間である僕の方が運動能力は彼らより優れているから、捕まったら何をされるかわからないでしょ?僕は獣医なので、たまに注射なんかもするし。

 ところが、あるとき、僕がプールにチャポンと入ったら、途端にワーッて寄ってくるんですよ。

山極:ハハハ!水の中は俺たちの世界だ、みたいな感じですね。

小菅:そう、水の中では自分に敵う者はいないという自信があるから、警戒心や恐怖心がないんでしょうね。

山極:なるほどね。

小菅:僕たち人間のことは得体の知れないものだと思っているから、ヒゲを前に向けて、ツンツンと僕をつついてくるんです。