小菅:そうです。人間に対する興味はものすごくあるから、絶対来ると思いました。実際にあの円柱水槽にアザラシを入れた後、僕、水槽の前でカメラを構えて待っていたんですよ。そうしたら1時間後ぐらいかな、アザラシは入念に水槽を点検してから、ちゃんと入ってきました。それで、僕の前で止まって、じーっとこっちを見ている。

好奇心のないアザラシは
生き残ることができない?

 山極:へぇ(笑)。僕らが動物園でこちらの世界から向こうを見ているのと同じで、向こうは自分たちの世界である水の中から安心して人間たちを見ているわけですね。

円柱水槽から人間の世界を眺めるアザラシ同書より転載

小菅:僕は、アザラシを見ていて、好奇心が実はアザラシの生存にも関わっているんじゃないかと思いました。

山極:ほー、どういう場面で?

小菅:動物園でたくさんの動物を見てきた中で、哺乳類というのは、授乳して子どもに最初の食べ物を教え、ある程度それが浸透した段階で親離れする、という印象を持っていたのですが、アザラシは全くそういう段階を踏まないんですよ。

 旭山動物園ではゴマフアザラシが何回も繁殖しました。白い産毛に包まれて生まれてきた赤ちゃんが、産毛が抜けて普通の親と同じ模様になるまでだいたい2週間から3週間なんですね。

山極:そんな早いんですか?

小菅:そう、早い。それまでは、もちろん授乳して徹底的に面倒を見ます。面白いのは、最初に水に入るのも早いこと。生まれたその日に入っちゃう。そのときも親はずっとくっついています。なかなか陸に上がれないときには、短い前脚で子どもの胴体を抱えるようにして陸に上げる。

 乳汁の成分がものすごく濃いので、10キログラムぐらいで生まれた赤ちゃんが、あっという間に30キログラムぐらいになります。親はもちろん餌の魚を食べるんですが、子どもはその間、餌を食べません。